『武曲 MUKOKU』熊切和嘉監督

「登場人物をたがが外れた境地にもっていきたい」

——監督は、生まれが北海道、大学時代が大阪…と違うカルチャーを持つ土地で暮らしてきた経験をお持ちです。場所にこだわられるのは、そうした経験と何か関係あるのでしょうか?

影響があるんですかね…わからないですけど。でも、僕がいつも撮っているこのぐらいの規模の映画だと、やっぱり、ロケ地を味方にしないと力にならないんです。それは『海炭市叙景』を撮ったときに強く感じました。やっぱりセットで撮った映画はできないですから、如何に自然を味方につけるかというところではこだわったかなと思います。

——主演の綾野剛さんが役に傾けた熱量がビシビシつたわる作品でもありました。クランクイン前には、もうかなり作り込んでらっしゃったのですか?

あの酔っ払った状態はもちろん芝居ですが(笑)、準備は万全でしたね。体も作っていましたし。実は、どうしてもスケジュールの関係で、嵐の中の決闘のシーンを、撮影が始まって5日目ぐらいで撮らなきゃならなくて。僕は5日目なんて嫌だな…と思っていたんですけど、綾野くんは「いつでもいけます」って言ってました(笑)。

——いつでもあの決闘モードにもっていけると…。演出に関して、そこまで準備してこられていた綾野さんにある程度委ねられた形だったのでしょうか?

かなり委ねていますね。それは綾野くんだけじゃなく、他の方もそうなんですけど。現場でどうこう言わなくても、インする前から何度か会って、打ち合わせもしていますし、そうするなかで、皆さん同じほうを向いているなってわかったし、気合いを入れてくれていたので。他の作品でも、最近は細かく言わなくなってきました。もちろん、違ったら言いますけど。

——俳優さんに委ねられて、それでも双方の意見に齟齬があった場合は?

僕が間違えることもありますし、俳優が間違えることもある。それはもう映画にとって正しいほうというか、場合によりけりですね。1キャラクターの感情面では正しいけど、映画の都合上こうしてほしい、っていうのは俳優にも言います。

——最近は委ねることが多くなったとおっしゃっていましたが、組まれている役者さんがみな優秀だからという側面も?

それもありますね。あと、もしかすると最近は俳優が僕の作品も見てくれていて、なんとなく僕が好きな感じをわかって下さってるのかなと思うこともあります。小林薫さんなんかもう今回で3本目ですし。そういう部分ではやりやすくなったかなと思います。

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