『タレンタイム〜優しい歌』アディバ・ノールさん

「ヤスミン・アフマド監督は自分を大事にすることを教えてくれた」

アディバ・ノールさん

 2009年に51歳の若さで亡くなったヤスミン・アフマド監督の遺作『タレンタイム〜優しい歌』が公開中だ。
 マレー系、中華系、インド系など多民族で成り立つマレーシア。ある高校の音楽コンクール「タレンタイム」に出場する生徒たちに焦点を当て、民族と宗教の違いを越えた恋、友情、家族愛、葛藤などを繊細に描く。
 東京国際映画祭をはじめとする映画祭や自主上映会などで鑑賞したファンから根強く支持され、愛されてきた本作が、8年の歳月を経て待望の一般公開。文化の多様性を温かく描いたヤスミン監督の視座は、不寛容な社会と言われる現在に生きる私たちに改めて大切なものを教えてくれる。
 日本公開を祝して、ヤスミン監督作品の常連で、『タレンタイム』にも教師役で出演しているマレーシアの有名な歌手で女優のアディバ・ノールさんが来日。撮影秘話やマレーシアのエンターテインメント業界の裏側を紹介してくれた。


ー90年代に歌のコンテストで優勝したことが芸能界のキャリアのスタートだったそうですね。

アディバ・ノールさん(以下、アディバ):「90年代の新しい声を探す」という全国キャンペーンが展開された中で新しい才能として見出されました。そのあと、いろんな制作会社からCMなどで歌う仕事を依頼され、大手広告会社でCMディレクターをしていたヤスミンと出会いました。

ーマレーシアでは、そういう歌のコンテストはたくさん開かれているのですか?

アディバ:90年代は年に1回程度で、1つのテレビ局がスター誕生のような番組を作っていただけでした。でも今は、年間通してさまざまなコンテストが行われています。今週はソロアーティストの発掘だと思ったら、10週間後にはデュエットやロックミュージシャン発掘の番組が作られていたりして、非常に増えているのが現状です。テレビでは年6〜7回そういうコンテストがあるのではないでしょうか。テレビ以外でもクラブや新聞社が主催する才能発掘のイベントがあったりします。あまりにも多いので、「マレーシアにはそんなにたくさんの才能がいるかしら? 同じ人ばかり再選されてるんじゃない?」って心配してしまいます(笑)。


—『タレンタイム』では「アディバ先生」というご自身のお名前のままで教師を演じていらっしゃいますね。芸能界に入る前は英語教師をされていたそうですが、アディバ先生を演じるにあたって取り入れたご自身のクセやアイディアはありますか?

アディバ:ヤスミンに「どういう教師だったの?」と聞かれたので、「反骨精神があって、どちらかというと学校側より生徒の味方をするような教師だった」と答えました。そしたらヤスミンは「それを役に活かしてね」とだけ言って、私をカメラの前に残して行ってしまった。なので、自分でキャラクターを考えないといけませんでしたね。私は教師時代、お姉さんのように生徒に接していたことを思い出したので、威圧的な存在感を醸し出して廊下を歩きながらも、生徒たちの前を通るときは急に「What’s up?」ってやるような演技をしました(笑)。私はこの映画の通りの教師だったと思いますよ。役名が私の実名なのも、おそらくヤスミンからの「あなたのままで演じて」というメッセージだったのではないでしょうか。

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