【TNLF】スパロウズ

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

g-sparrow-kari突然、父の住む田舎町で暮らす羽目になった16歳の少年アリ。そこは彼が幼少時を過ごした場所でもあったが、成長した幼なじみとは馴染めずにいた。閉鎖的で退屈な毎日の中で、そこで生きることを受け入れてゆく少年の諦念を透き通った映像で映し出す。国際的評価も高いアイスランドの新鋭ルーナ・ルーナソン監督作、日本初公開!
(公式サイトより)

クロスレビュー

藤澤貞彦/少年の天使度:★★★☆☆

この作品では、アイスランドの雄大な風景は、美しければ美しいほど、逆に重くのしかかってくる。それに比べて人間の集落があまりにもちっぽけで、海と山の間に存在する小さな空間にへばりつくかのように存在しているだけだからである。重く大地にたなびく雲は、漁業と魚介類の加工工場しか産業というものがないこの街から、もはや外には出られないかのような閉塞感をもたらしている。狭い土地に限られた人数の村人たち。楽しみと言えば、酒とSEXとテレビだけ。こんな村に都会から少年が1人投げ込まれた。彼はいわば天使のような存在である。歌声も、身も心も。思えば冒頭、教会の天井を捉えたカメラが下にパンして、少年の後姿だけが写ることからも、彼がそうした存在として意識されていたのである。いわば少年は、彼の純真な視線を通して、この国の貧しい地方の現状をより醜悪な形で呈示する役目も負っているのである。アイスランドには遺伝子データバンクというものがあるのが有名だが、その理由の1つとして、血が濃いことがあげられている。この作品を観ると、その理由もわかるような気がしてくるのだ。

鈴木こより/白夜がこんなにも残酷だったとは!度:★★★☆☆

「誰か、アリとアリの美しい歌声を護って!」と、終始祈るように見ていたが…。少年アリは、ある夏休み、それまでの生活や母と離れて、父の住む北の田舎に引っ越すことになる。夏のアイスランドは夜が果てしなく長い。娯楽のない田舎で時間をもてあました大人たちが、酔い潰れ乱行を繰り広げるが、父の家もそんな大人たちの溜まり場だった。物静かな少年にとってそれは地獄絵図のような光景だろう。かつて光に包まれたドームで歌声を披露していたアリが、真っ暗なタンクの中で自分に言い聞かせるように歌う。この対比の構図が、まるで天国から地獄に堕ちた天使のようで、残酷さを際立たせる。行き場をなくしたアリが次第に土地に染まっていくように思えたが、ラストシーン、すべてを包み込むような彼の行動に<観客>も救われる。

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017開催概要

映画祭会期:2017年2月11日(土)~2月17日(金)
会場:ユーロスペース
イベント会期:2017年1月21日(土)~2月19日(日)
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
※1/21(土)のオープニングイベントではラース・フォン・トリアーの「キングダム」イッキミ!を開催するほか、切り絵作家アグネータ・フロック展やアイスランド写真展、音楽イベントなど盛りだくさん。来日ミュージシャンによる伴奏付きサイレント映画の上映も!
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
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※前売り券はe+(イープラス)のWEBサイトにて販売中。前売り券は作品、日時指定でご購入いただけます。全席自由席、各回入れ替え制で、上映開始10分前から整理番号順のご入場となります 。整理番号をご確認の上、必ず開場時間までにお越しください。

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