【TNLF】コールド・フィーバー
作品紹介
平凡なサラリーマンのアツシは、事故死した両親を供養するために真冬のアイスランドを横断する。トラブル続きで思うように進まない旅を続けるうちに、彼はこの地に存在する霊的な何かを感じ取る。『春にして君を想う』のフリドリクソン監督が永瀬正敏を主演に迎えて送るロードムービー。東京ロケも敢行された。(公式サイトより)
提供: アダンソニア
クロスレビュー
藤澤貞彦/アイスランドの彼岸度:★★★★☆
東京のスタンダートサイズの画面が、アイスランドではシネマスコープサイズの大画面になり、その雄大な風景画目の前に迫る。雪に覆われた一面真っ白な世界。風が吹きすさび、粉雪が地面を這っていく。白い大地の向こうには氷河が迫り、雪解け水が流れ落ちる滝があったかと思えば、地熱で温められ茶色の地肌を晒す山がそびえていたりする。この風景は、この世というよりはあちらの世界に近い感覚がある。実際、夜中にひとり外に放り出されることは死を意味するのであり、そういう意味では、ここは生と死が隣合わせの世界なのである。ここでは、精霊が現れ人を助け、あるいは意地悪をするというような不思議な現象も、自然に受け容れられるような気がする。日本人の若者の、アイスランドで事故に会った両親の弔いの旅は、大地を進むごとに、彼岸へと近づいていくかのような感じがするのも、この風景のせいなのだろう。お線香をあげ、蝋燭を氷の船に乗せて精霊流しのように川に流す行為の厳かなこと。人の死を悼む気持ちが自然に溢れ出してくる。現代人が疎かにしがちな弔いという行為の本質が、そこには確かに存在していた。
鈴木こより/極寒ロケに永瀬正敏の苦労を想う度:★★★☆☆
約20年前の作品で、喫煙シーンの多さと永瀬正敏演じるアツシが上司からカラオケを強要されるシーンに時代を感じる。東京の喧騒とアイスランドの果てしない雪景色。それぞれの街並みや風景、生活の営みの違いが鮮明に映し出される。東京が舞台のシーンに関しては、アイスランドの監督が東京を訪れた時に受けたであろうカルチャーショック(ここが変だよ日本人みたいな)が、そのまま映像に収められたという感じがしないでもない。一方のアイスランドは、「人より羊の数の方が多い」というセリフにもあるように人間の気配が薄い。とにかく寒そうで死と隣り合わせの過酷な環境と言ってもいい。それなのに、そこに暮らす人々から感じる生の気配はむしろ東京より濃いように思えるから不思議だ。タイトルもそうであるように、本作はさまざまな対比を織り交ぜて生と死を見つめた映像詩である。
トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017開催概要
映画祭会期:2017年2月11日(土)~2月17日(金)
会場:ユーロスペース
イベント会期:2017年1月21日(土)~2月19日(日)
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
※1/21(土)のオープニングイベントではラース・フォン・トリアーの「キングダム」イッキミ!を開催するほか、切り絵作家アグネータ・フロック展やアイスランド写真展、音楽イベントなど盛りだくさん。来日ミュージシャンによる伴奏付きサイレント映画の上映も!
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
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※前売り券はe+(イープラス)のWEBサイトにて販売中。前売り券は作品、日時指定でご購入いただけます。全席自由席、各回入れ替え制で、上映開始10分前から整理番号順のご入場となります 。整理番号をご確認の上、必ず開場時間までにお越しください。