東京ウィンドオーケストラ

響け、不協和音!屋久島の空の下で!

sub2_tokyowo アマチュア楽団が不協和音を奏でるのと同じように、登場人物たちもまた、不協和音を奏でている。それは、それぞれの思い込みとそのギャップから来ていると言えるだろう。東京ウィンドオーケストラに憧れ、その名前だけで本物と信じ込んでしまい、現実を見ようとしなかった役場の職員(小市慢太郎)。それに対して、音楽に疎く名前に何の価値も感じていなかったからこそ、最初から尊大な態度しか取れなかった詩織の上司(松木大輔)。その間に流れる不協和音。東京ウインドオーケストラというカッコイイ名前を持ちながら、本当に下手くそな演奏しかできないというギャップを抱えた楽団員たちだが、舞台に上がりたいという思いだけは強く持っていることから起きた主催者側との不協和音。そしてなんといっても、何に関しても無関心で、投げやりな感じの詩織。彼女が周囲と不協和音ばかり奏でていることの根本的な問題も、実は自分の理想(思い込み)と現実の人生にギャップがあることから来ているのである。しかし、人はその溝を埋めることで、自覚することで、初めて理解しあえるし、人生を前に進めることができるものだ。作品はその真理を笑いで包みこんでいる。

sub3_tokyowoそうした意味では、何より楽団員を演じた俳優たちは、その点を体現した存在であるとも言えよう。彼らは演奏に関してはまったくの素人であるため、演技ではなく必死に演奏しているのである。そのうえ、彼らは間違いなく自分たちが本気で演奏しても、映画の中では、文字どおり不協和音を奏でるばかりであり、それがまた笑いのツボになっていることを自覚して演奏しているはずだからである。そういう意味では、彼らの生身の姿こそが、作品の説得力に繋がっているとも言えるだろう。



©松竹ブロードキャスティング
■2017年1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
 1月14日(土)より鹿児島ガーデンズシネマにて先行公開

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