『幸せなひとりぼっち』ハンネス・ホルム監督

ベストセラー小説を映画化することへの挑戦~原作ファンにいかに気に入ってもらえるか

%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3――ロルフ・ラスゴードさんは『太陽の誘い』(98)や『アフター・ウェディング』(06)などにも出演されているスウェーデンきっての名優ですが、そんな彼をオーヴェ役にキャスティングされた理由は何でしょうか?

HH:ロルフはスウェーデンでも実力派として知られる名優です。私はあくまでコメディ役者ではなく演技力が優れた役者をキャスティングしたいと思っていました。私はずっとオーヴェ役はロルフしかいないと思っており、オーヴェ役をオファーしたとき、彼は驚いていたようでした。彼はどちらかというと演劇の分野でとても有名な役者です。自分にはコメディの経験が豊富にあり、彼は主にドラマ俳優としての経験を持っていた。なので、現場ではうまくバランスがとれたと思います。他のキャストは数々のスクリーンテストやオーディションを経て決まりました。なかなか難しいプロセスでしたが、突然決まることもありました。キャスティングが決まった時点で、みんな個性の強い役者ばかりだったので、そこまで演出しなくてもいいぐらいでした。
ロルフは結果としては今年のゴールデン・ビートル賞(スウェーデンのアカデミー賞)やシアトル国際映画祭等で受賞したり、他の映画祭でも賞にノミネートされたりするなど高い評価を受けることができて、良かったと思います。

――監督が最も気に入っている場面はどこでしょうか?

HH:パルヴァネとオーヴェがはじめて打ち解けたかと思ったら喧嘩別れしてしまう場面ですね。笑いがあって打ち解けたかと思ったら、パルヴァネがオーヴェの亡くなった妻のことを尋ねると、彼はすっかり気分が悪くなってしまう。喜びと悲しみを同時に表現できる場面が好きなので、悲劇をコメディの融合、そういうものを観客として観たいと思っています。

――オーヴェと同居することとなる猫の存在感が大きく、とても印象的です。猫の撮影で難しい点はありましたか?

HH:デジタル処理を利用できるような予算はなかったので、あの猫は本物の猫です。マジックとオーランドという2匹の猫を使って撮影しました。オーランドは怠け者なので、寝ているなど動かないような場面ではオーランド、歩くような動きがあるシーンではアグレッシブなマジックと使い分けました。ただ2匹は見分けがつかなくなることもあって、ロルフに間違ったほうの猫を渡してしまったときもありました。でも彼らは良い演技してくれました。プロデューサーは猫を使いたくないと主張しましたが、映画では魅力の一つとなりました。

――映画を楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします。

HH:ぜひ作品を観に来てください。人生についての映画で、コメディと悲劇をブレンドした作品です。主人公のオーヴェは日本人っぽいところがあると思います。

<プロフィール>
ハンネス・ホルム Hannes Holm
62年スウェーデン生まれ。俳優としてキャリアをスタートさせ、81年に『Inter Rail』でデビュー。その後、TVシリーズにも出演し、出演、監督、脚本をこなしたコメディシリーズ「S*M*A*S*H」(90)で成功を収める。『One In a Million』(95)で長編監督としてデビュー。その後、スウェーデン映画史上興行成績ナンバー1となった『Adam & Eve』(97) など、多くのコメディ作品の脚本と演出を手がける。『青空の背後』(10)は、トロント国際映画祭などで上映され、日本でも14年のスウェーデン映画祭で上映された。


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ゴールデン・ビートル賞主演男優賞、観客賞、メイクアップ賞受賞
第89回アカデミー賞外国語映画賞スウェーデン代表
12月17日(土)新宿シネマカリテ&ヒューマントラストシネマ渋谷他順次公開!

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