【TIFF】サーミ・ブラッド(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©Nordisk Film Production Sverige AB

©Nordisk Film Production Sverige AB

1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らすサーミ人は、劣等民族とみなされ差別的な扱いを受けていた。従属を拒んだ少女は、運命を変えようと決意する…。
30年代のサーミ民族は支配勢力のスウェーデン人によってスウェーデン語を強要され、同化政策の対象となり、劣等民族として差別を受けた。スウェーデンの歴史のダークサイドである。カーネル監督自身がサーミ人の血を引いており、自らのルーツをテーマとする短編を撮った後、処女長編となる本作でも同テーマを扱った。(TIFF公式サイトより)

クロスレビュー

鈴木こより/圧倒的な魅力を放つヒロインから目が離せない度:★★★★★

妹の葬儀のため数十年ぶりに故郷へ帰るクリスティーナは、「あの人たちって嘘つきで盗人で…」と嫌悪を隠さない。場面は、そんな彼女の思春期の記憶を映しはじめる。少女はトナカイの放牧を生業とするサーミ人の家庭で生まれ育ったが、担任の女性教師に憧れ、教師になる夢を抱いていた。しかし出自ゆえの現実を思い知らされる。聡明で、サーミ人としての誇りを強く持っていたからこそ彼女は反発し、疑問を抱く。「そんなこと誰が決めたの?」と。無教養な人間だけじゃなく、彼らを受け入れているように見えるインテリたちでさえ偽善的で、彼女の心を踏みにじる。少女の真っ直ぐな瞳は、映画を観ている観客にも静かに問いかけているようで、安易な同情を許さない。故郷への尋常でない嫌悪感は、描かれなかったその後の人生の壮絶さと、出自を否定し続けた自責の強さを物語っている。少女の止められない情熱と瑞々しい感性を体現したサーミ人女優レーネ=セシリア・スパルロクが、心を動かされずにはいられないほど魅力的。

杉本結/しばらく歌が頭から離れない度:★★★☆☆

サーミ人という少数民族はトナカイの放牧をして生活していた。劣等民族とされたサーミ人は頭の作りもスウェーデン人とは違うと言われ進学も許してもらえない。頭の良い主人公が進学する為には家族を捨て自分自身を捨て他の誰かになるしかなかった。幼い恋心も淡い切なさが心にしみわたる。好きな人の前でラップ人(サーミ人の事をさす差別用語)と呼ばれることでどれほど心を痛めたか考えるだけで胸のあたりがチクチクする。
なかなか日本ではスウェーデン映画をみる機会は少ない。貴重な作品であり、今もどこかで同様の出来事が起こりえるという事実を知ってほしい。東京国際映画祭では審査員特別賞と主演女優賞をダブル受賞!劇場公開も決定している力強い作品だ。


第29回東京国際映画祭
会期:平成28年10月25日(火)~11月3日(木・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか 都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:http://2016.tiff-jp.net/ja/

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