【TIFF】空の沈黙(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

© RTFeatures

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侵入者から妻への暴行を止められなかった男が、自責の念に苦しみ次の行動を思い悩む。妻も暴行された事実を隠し、二人の間には重い空気がたれこめる。極限状態に置かれた人間心理の奥底を見つめるスリラー。

短編時代からカンヌ映画祭の常連であったデュトラ監督は、処女長編『Hard Labor』(11/フリアナ・ロハスと共同監督)が同映画祭の「ある視点」部門に選出された。収入を失う危機に直面する家族の物語にホラーテイストを加味した作品であったが、監督は長年に渡り日常の中に潜む恐怖に関心を寄せている。3作目となる本作において、恐怖のレベルは異常事態下における夫婦間の心理戦へと進化し、パラノイア的なモノローグと計算されたカメラワークが見事に緊迫感を高めている。原作のセルジオ・ビジオは極限状態における濃厚な心理サスペンスを得意とするアルゼンチンの作家で、作品の多くが映画化されている(09TIFF審査員特別賞受賞作『激情』等)。(TIFF公式サイトより)

クロスレビュー

富田優子/掴みはOKだが尻すぼみ感が残念:★☆☆☆☆

冒頭からかなり生々しいレイプシーン。しかも妻が乱暴されているのに夫はそれを止める勇気がなく、窓越しからただ見ているだけという状況に、いきなり嫌悪感がMAXになってしまった。だがそれは観客に媚を売っていないということであり、つくり手の度胸を感じた。ただ掴みはOKだったのだが、その後は尻すぼみの感はある。事件の後、夫も妻も互いに本当のことを打ち明けることなく疑心暗鬼となり、ネガティブな方向へ進んでしまう。彼らの心情の変遷を描写する方法として何度も独白と顔のアップが使われているのだが、それに頼り過ぎており、映像表現をもう少し工夫ができなかったのかと思う。ラストの空の余韻は美しかったが、心意気が空回りしているのが惜しい。
(どうでもいい余談)園芸店で働く兄弟の弟役の俳優がサッカーのウォルコット選手(イングランド代表/アーセナル)に似たイケメンさんなのが印象的。

藤澤貞彦/ヒッチコックにかぶれ過ぎて、方向を見失った度:★★☆☆☆

留守中に、妻が暴行された。それを偶然見てしまったが、止めることができなかった夫。お互いにそのことについて話すことができない2人。息がつまりそうな緊迫感のある夫婦のドラマになるのかと思いきや・・・突然スリラー映画に転調してしまう。加害者が母親と働く不気味な園芸店、彼女の足を引きずる音の誇張、主人公の妻が階段を昇っていくときの光と影の使い方などは、もうほとんどヒッチコックの世界。一歩間違えばコメディにもなりかねない、スレスレの恐怖。そのB級テイストは、それなりに面白いのだが、深刻なテーマにこの映画手法は、あまりにも場違い感がある。そもそもミステリーではない原作に、この味付けをしたこと自体に無理があったと言わざるを得ない。もはや珍品の部類かも。


第29回東京国際映画祭
会期:平成28年10月25日(火)~11月3日(木・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか 都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:http://2016.tiff-jp.net/ja/

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