【TIFF】アズミ・ハルコは行方不明(コンペティション)
作品紹介
突如、街中に拡散される、女の顔のグラフィティアート。無差別で男をボコる、女子高生集団。OL安曇春子(28)の失踪をきっかけにひとつの街で交差する、ふたつのいたずら。なぜハルコは姿を消したのか?(TIFF公式サイトより)
クロスレビュー
富田優子/眠っている暇はない映画度:★★★☆☆
ヒロイン春子(蒼井)の失踪の理由は、率直に言ってインパクトは乏しい。だが本作は彼女の失踪の謎解きが目的ではない。職場で、恋愛で、男性から理不尽な扱いを受けてきた女性たちの鬱屈した感情をエネルギッシュに描いている。とはいえ「男だから」という理由だけでボコる謎の女子高生たちの行動は不快であるが、蒼井、高畑はじめ女優陣のパフォーマンスには目を見張る。特に蒼井は行方不明でありながら、なぜか存在感を増していくという不思議さ。だが、一番オイシイ役どころは春子の先輩OL役・山田真歩。彼女のどんでん返しにはしてやったり!と思う人は多いだろうし、彼女のエピソードに男のバカさ加減が凝縮されていた。時系列をこま切れにして縦横無尽に行き来する構成だが、頭のなかで物語を再構築する楽しみがあるので、うっかり眠っている暇はありません。猫のみーちゃん(15歳)もかわゆい。
杉本結/現代女性を応援する映画度:★★★★☆
薄暗い夜にたばこを吸う女性の姿がとても印象的。原作は山内マリコでデビュー作「ここは退屈迎えに来て」も加藤ミリヤが絶賛して話題になった。最近の若い女性が感情移入しやすい作品であることは今回も類似する。登場人物は女子高生と20代前半の若者とアラサー女性、子持ちのシングルマザーと幅広い。出会うこともなかったであろう人間たちがほんの少しの偶然から歯車は動き出す。原作では一本の時間軸で描かれているのだが映像化するにあたり何十にも切り分けた時間軸を交差させることで謎に満ちた作品へと変化させている。
いったいなぜアズミハルコは行方不明になったのか?どこへ行ってしまったのか?
愛されたい女性が寂しさを埋める手段や近くにいる人に恋愛感情がわいたり、はたまたお金持ちこそが結婚相手にふさわしいのか?様々な視点で楽しめる現代的な作品だ。
第29回東京国際映画祭
会期:平成28年10月25日(火)~11月3日(木・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか 都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:http://2016.tiff-jp.net/ja/
12月3日より新宿武蔵野館他全国ロードショー