『レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏』審判も命がけ

まだ記憶に新しい、2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会。
予想をはるかに上回るサムライブルーの活躍もあり、日本国内もおおいに沸いた。サムライたちだけでなく、審判の西村雄一さんの笛も世界の舞台で評価され、決勝戦の第4審判員に大抜擢されるというニュースも。イングランドの幻のゴールも含め誤審が目立つ今大会で、西村さんの活躍は国内外にその存在をアピールする絶好の場となった。


その注目の決勝戦、主審のハワード・ウェブ(英)が一番最初にイエローカードを出した選手は、私の王子ロビン・ファン・ペルシー(蘭)だった。出されても仕方のないタックルとはいえ、その主審に対して心の中で毒づいたことは言うまでもない。
正しい判定をしても、誰かにうらまれてしまう悲しい仕事。そう、審判とは因果な商売である。正しくて当たり前、緊張感やプレッシャーは選手並み。いや、それ以上か。微妙なクロスプレーは悲劇である。どっちにしたって、不利な判定をされた国は黙っちゃいないのだから。誤審なんかした日にはもう…。

そんな審判という仕事の真相や知られざる裏側を確かめるべく、劇場に足を運んだ。90分間以上選手とともにピッチを走りまわる体力、ゲームコントロールする冷静さと威厳、どんな状況においても正当なジャッジをする勇気。どれも欠かせない資質のうえ、命がけときている。例えば、前述のハワード・ウェブ、前職は警察官だそうだ。もう大納得。
しかし、華やかな舞台の影で地味に仕事を全うするという、これまでのイメージを覆すようなシーンも。「サッカーのない人生なんて!」という欧州の人々にとって、審判は見過ごすことのできない存在のようだ。国によっては認知度も高く、子供からサインをねだられるウェブのような審判もいるのだ。

そんな審判団のピッチの裏側やプライベート、本音に迫った本作はサッカーファンなら必見のドキュメンタリーだ。彼らの表情からは達成感や誇りも含め、さまざまな感情を読み取ることができる。もしかしたら、世界中で最も刺激的で病みつきになる職業の一つかもしれない。

文:鈴木こより

原題:LES ARBITRES
監督:イブ・イノン他
2009/ベルギー
公式サイト: http://www.webdice.jp/referee/

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