アイ・ソー・ザ・ライト

29歳でこの世を去った伝説のカントリー歌手の絶頂と苦悩

istl_main_web日本人にとって1920年代に始まったカントリー音楽は、バンジョーを持ってカウボーイの衣装を着て唄う古臭いイメージのあまり馴染みのない音楽かもしれない。しかし、同じく古くからある日本の演歌などとは比べものにならないくらいアメリカでは影響力を持つ一大ジャンルであり、ルーツをたどればチャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーなどロック創世記の大スターを影響下に置き、現代においてもテイラー・スウィフトというポップスターを輩出する、アメリカ音楽のルーツでありながら現在進行形でもある音楽である。本作は、そのカントリー界最大のスター、ハンク・ウィリアムスがミュージシャンになってからの人生を描いた物語である。

映画は、愛するオードリー(エリザベス・オルセン)と結婚し、歌手としても成功したハンク・ウィリアムス(トム・ヒドルストン)の幸せが、才能のないオードリーが歌手になりたい夢のために隣で唄いたがる事への重圧や、過酷なラジオ出演やツアーの重圧から飲酒や女性に走り家族と溝が出来てしまう事や、持病の痛みに苦しみ薬物を服用する事などで次第に崩壊してしまう過程を描く。

有名人・芸能人が絶頂期を迎えた後、精神や肉体のバランスを崩し不幸になっていくというのは昔も今も変わらない永遠のテーマなのだろう。今年7月に公開されたドキュメント映画『AMY』でも、リハブという曲が大ヒットした後にアルコールとドラッグに溺れ27歳で亡くなった歌手エイミー・ワインハウスの生涯を見たばかりなので、余計にそう感じる。昨今の日本だと、絶頂期の芸能人が週刊誌に不倫を暴露されるのも内容こそ違えど似た様な事かもしれない。

ほとんどの人は、その様な絶頂期を迎える事なく人生を終える。だからこの映画を観た時に、なぜ酒を過剰に飲んだり、身体がダメになると分かっている薬に手を出したり、倫理的に許されない不倫をしたりするのかという感想を持つかもしれない。しかし、ハンク・ウィリアムスやジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ドアーズのジム・モリソン、ニルヴァーナのカート・コバーンなどの前例があるのに、現代でもエイミー・ワインハウスの様な事が起きてしまうのは、絶頂期においてはセルフコントロールがとても難しいのだという事を証明して有り余る。かと言って、過剰な飲酒や薬物や不倫を擁護したりするつもりはないが、自分は決してそんな事はしない、だから一方的に非難するという立場は取りたくない。人間とは弱いもの、自分も今は大丈夫でもいつかそうなってしまうかもしれない、でも弱いなりになんとか寸前で踏み止まらなければいけないという意志と覚悟を頭の片隅に置いて生きて行こうと、この映画を見て思った。

映画から少し脱線したが、先ほど名前の出たテイラー・スウィフトとも繋がりの深い(?)トム・ヒドルストン、ハンクの数々のカントリーソングを吹替えなしで唄っているのがいい。イギリス出身のトムがアメリカ南部の人物を演じるには訛りを直す必要もあっただろうし、ヨーデルの様な独特なハンクの唄い方をまねるのも大変な努力があっただろうと想像する。そして何より、ハンク同様とてもハンサムである。カントリー音楽にイケメン、それだけで合格点のおススメ映画である。

10 月1 日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

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