『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』 俳優ケイリー=ヒロユキ・タガワさん
ーーアメリカ人ではなく第三者的目線を持つメキシコ人監督が書いた脚本の感想はいかがでしたが?
ケイリー:脚本は二人のメキシコ人が書いてます。一人は監督で、もう一人はプロデューサー&脚本家の方。二人が書いたものをアメリカ人が英訳したから、最初に描かれていたハシモトというキャラクターはいわゆるアメリカ人が考える日本人でした。「これはちょっと違うよ」と思い、色んなアイデアを出しました。僕はアメリカ育ちだけれども、中身の芯の部分はすごく日本人です。最終的にはステレオタイプな日本人ではなくて、もっと人間味のある、温かみのあるキャラクターになりました。ハシモトという役はもちろん人間として欠陥があったり、色んな間違いもしたりするんだけれども、本当にいい人で心温かい人間で、ペッパーのことを理解してあげて、彼の色んなことへの理解を深めるために手伝ってあげるんです。
ーー ハシモトを演じるにあたって心がけたことは何ですか?
ケイリー:どんなに頑張っても自分は完全な日本人ではないとは思っています。話し方やイントネーションがアメリカ育ちなので、ちょっと違う。毎回日本語の勉強をしています。渡辺謙さんや真田広之さんがやるのと自分がやるのとではやっぱり違う。でも過去30年、日本人役と言えば大体僕のところに来ました(笑)。最近になってハシモトのような深みのある役を演じるようになって、それだけ映画の幅も広がってきているのかなと思います。『47RONIN』の将軍役とか、これまでは悪役ばかりだったけど、色んな役をやれるようになっています。常に気を付けていることは、できるだけ”本物の日本人”を演じること。役者として「日本人とはこういうものなんだよ」というのをいろんな視点から演じられるように実践している。トミー・リー・ジョーンズさんは年齢を重ねるたびに役者として素晴しくなっていっていて、色んな幅の役をやっていて、いつも尊敬しています。
ーーこれまでアメリカに住んでいて、実際に差別を感じたことはありますか?
ケイリー:今回演じたハシモトはおじいちゃんだけど、差別的な経験は6歳の頃を思い出します。その頃は父の陸軍の仕事の関係でアメリカ南部に住んでいました。周りに日本人もいないし、とても差別的なことを受けました。
ーーモンテヴェルデ監督はどんな人ですか?
ケイリー:監督には現場でも脚本を直してもらいました。時々喧嘩もしたけれど、いろいろ意見を聞いてくれてとても感謝している。「僕は日本人の心と魂をちゃんと演じたい」と言って、最終的には監督も理解してくれて、やらせてくれました。メキシコ人の監督とプロデューサーによるアメリカ映画ですが、小さい男の子と日本人のおじいちゃんの話を作るなんて、この作品に関われて良かった。「日本人は弱虫ではなくて魂があって、強いんだよ」ということをこの映画で演じることができて、本当に誇りに思っている。