『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』 俳優ケイリー=ヒロユキ・タガワさん

「ステレオタイプではない、日本人の心と魂を演じたい」

LB_other3カラダは小さいけれど信じることを諦めなかった少年が世界を変える。第二次世界大戦によって最愛の父親と引き離されたペッパーは、戦場から父親を取り戻すために”ある計画”を実行するのだが…。いじめられっ子の無力な子供に一体何ができるのだろうか。そこで導かれるようにペッパーの前に現れるのが、日系移民のハシモトだ。敵国の移民としてハシモトもまた孤独であったが、ペッパーにとってたった一人の親友となり、時には父親のような、またある時はメンターとも言える存在になっていく。
新鋭アレハンドロ・モンテヴェルデ監督はハリウッドで映画を作ることを夢見ていたメキシコ移民で、本作は長編2作目。本作のハシモトという重要な役に”年配の日本人俳優で繊細さとカリスマ性の両方を持っている人物”を必要としていたが、「ケイリーはまさにハシモトそのもの」と語っている。今回、カナダ在住のケイリー=ヒロユキ・タガワさんへの電話インタビューが実現したが、役作りなど映画に関するエピソードから、今の大統領選にみられる移民に対する不穏な空気、またオバマ大統領の広島訪問についてなど、幅広くお話を伺うことができた。


ーー 本作のタイトルである”リトルボーイ”は、日本に投下された原爆を表す言葉でもありますが、今年5月、オバマ氏が現役の米大統領として戦後初めて広島を訪問しました。日本では歴史的なこととして好意的に報道されましたが、アメリカでの反応はどうでしたか?

ケイリー=ヒロユキ・タガワさん(以下、ケイリー):共和党のトランプ氏が「アメリカを再び偉大に」というスローガンを掲げていて、“第二次世界大戦に勝ったアメリカがどれだけ素晴らしいか”というような風潮が復活しています。アメリカの半分ぐらいがそういう雰囲気で、オバマ大統領の広島訪問が歴史的なことだと認識している人が、実際にはそんなにいないと思います。そこまで大きな出来事だと捉えられていません。これからも色んな人種が入り混じっていくアメリカだと思うから、とても大事な出来事だった。オバマ大統領はハワイ育ちで、アジア人、東洋人と一緒に暮らしてきているから、そういった歴史的背景もよく解っていらっしゃるけど、アメリカ全体的にはそういう認識しているのは半分ぐらいだと思います。

ーー2014年製作の映画ですが、オバマ氏来日後ということで日本での公開はタイムリーだと思っています。米公開時の反応はどうでしたか?

ケイリー:アメリカではキリスト教映画、宗教映画として公開されてしまいました。ハリウッドの映画評論家はそういう映画が大嫌いなので、それだけで観る人の幅がとても狭くなってしまった。NetflixやDVDでも観られるようになり、今になってすごく高い評価を得ています。

ーーハシモト役についてキャスティングの経緯を聞かせてください

ケイリー:監督は日本語と英語を話せる俳優に会っていました。まだ役をやると決まっていない顔合わせの時に、「せっかくこんなにいい話なんだから、ステレオタイプの日本人をやめればもっと素敵なストーリーになるし、より強いメッセージが伝えられるのに」と言いました。「僕にちょっと意見させてもらえませんか」と。
(日系移民だから)いつも入店を断られてしまうお店だけど、ペッパーを一緒に連れて行くことで、ようやくアイスクリームにありつける、というシーンは実は僕のアイデアで、監督には全く想像できないことでした。僕はハシモトがどういう状況にあるのか解っていたので「こういうシーンを作りませんか?」と提案しました。

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