中国の映画プロデューサー王彧(ワン・ユー)さん

「プロデューサーと脚本家が足りない」―ベルリン銀熊賞『長江図』プロデューサーが明かす、バブルの中国映画業界の実態

■日本は国内市場しか見ていない

—中国映画界の健全な発展のために、今、一番欠けているものは何でしょうか?

:一番欠けているのは、“プロ”のプロデューサーと脚本家です。中国で民間企業が映画製作に参入できるようになったのは2002年からです。それ以前は国有の映画会社のみだったので、本当に映画産業というものが生まれてから、まだ14年しか経っていません。中国の映画産業はまだ発展の初期段階です。私も20年間で30本近くの映画を作りながら映画を撮るとはどういうことなのか学んで来た身ですから、育成には時間がかかると思っています。今はバブルのような好景気で失敗することもあると思いますが、経験は時間をかけないと蓄積されていきません。

—中国と韓国の間では合作映画の製作が盛んですが、日本は海外との合作自体が少ないです。王さんは日中合作映画のプロデュースのご経験もありますが、日本と映画を作る難しさはどこにあると思いますか?

:国際共同製作というのはとても複雑ですが、簡単に言うと、ほとんどの日本の映画関係者は、日本国内の身辺事情にしか関心がないように見えます。日本の映画市場は国内循環型です。国内だけの興行収入で製作費が回収できればそれでよく、黒字になろうと、赤字になろうと、海外で作品を売りたいとはあまり思っていない。中国もよく似ていて、大きな国内循環型の市場です。そうすると、日中が合作する場合、作品をどこで売るのか?という問題が出てきます。日本の映画会社は日本で売りたい、中国は中国で売りたい。一番の難点は、2つの市場にがっちり適した作品を作ることができないということです。
では、韓国とはなぜ共同製作が進むのか。それは、韓国市場は規模が小さいので、そもそも自国で売ることを念頭に置かず、中国市場で製作費を回収できればいいと考えているから。ターゲットを明確に中国市場に絞っているからですね。
また、日中合作に限って言えば、適したテーマを探すのがとても難しい。両国の文化はまったく異なりますから。

—過去にも日中合作映画はいくつかありましたが、“日中友好”を意識しすぎているのか、物語のボヤッとした面白味に欠ける作品が多かった気がします。

:まさにそれです。立ち位置がぼやけてしまうのです。日中合作で最も難しいのは脚本づくりですね。中国と韓国の間には共同製作に関する協定が結ばれていますが、日本との間にはありません。現在、協議されているという話も聞きますが、日本の映画関係者は、中国だけでなく、海外との合作をそれほど望んでいない印象を受けます。

―これから、どのような作品をプロデュースしていきたいですか?

:まず、私自身が好きな作品だということを大前提に、タイプの違う映画を作っていきたいです。今、日本の会社とアニメ映画の製作について話し合いを進めています。アニメ映画は、ドイツの会社ともプロジェクトを進めていて、チャレンジしていきたい分野ですね。あとは、私が好きなサスペンスも何本か製作したい。探偵モノもいいですね。

Profile of Wang Yu
光延時代(文化)伝媒有限公司社長
北京電影学院卒業。『プラットホーム』『世界』『長江哀歌(エレジー)』など賈樟柯作品の製作に長年関わったほか、2003年ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞の『盲井』(李楊監督)、2006年ロッテルダム国際映画祭でタイガー・アワードを受賞し、第7回東京フィルメックスでも上映された『ワイルド・サイドを歩け』(韓杰監督)など、国際的に評価の高い若手監督の作品を数多くプロデュース。日中合作映画『鳳凰 わが愛』(07)、安藤政信主演の中米合作映画『ソード・ロワイヤル』(10)など、海外との共同製作経験が豊富。

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