【SKIP CITY IDCF】話す犬を、放す

話せない犬を、放せない

話す犬を、放すサブ

©2016埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ

物忘れよりも、幻視が見られる場合が多いというレビー小体型認知症、ユキエの場合は、最初に昔飼っていた犬チロが現れたことから、異常を認識する。幻視といえども、自分の記憶の中からそれが表出するというところに、脳の働きの不思議を感じてしまう。

 『話す犬を、放す』犬は話せないからこそ、簡単には捨てることができないものである。犬はこちらの事情などわかるはずもなく、例え捨てようとしても、後を追いかけてきてしまうものだからだ。犬好きの人がそれを断ち切れるとは到底思えない。もしかしたら、ここで家族を捨てたなら、もしかしたら、しがらみを断ち切っていたならば、違う人生が送れていたかもしれない。けれどもそうすることができなかった。そこには、犬を捨てられないことと同じく、理屈はないのである。ユキエにとっては自分の過去であり、レイ子にとっては、今現在の自分と母親が置かれた状況であり、映画監督にとっては、これからキャリアを積み上げていきたい時に、子供が生まれたということである。母と子の絆を守るため、そういう状況の中で、女性がどうやって、自分の存在価値を見つけながら生きていくか。この作品はその闘いのドラマなのである。ギリギリのところで、踏ん張り子供と仕事を両立していこうという、映画監督のような生き方もあるかもしれない。それができない人もいるかもしれない。話す犬チロとは、人間の、特に女性の捨てられなかった荷物(というと語弊があるかもしれないが)、過去を象徴したものと言える。いつか誰にでも、今が例えダメでも、そんな犬チロが現れて、解き放てる時がくるのではないか。映画のタイトル『話す犬を、放す』にはそんな希望が込められている。むしろこの作品は、その中身においては、『話せない犬を、放せない』・・・そんな女の葛藤のドラマであると言える。

上映作品の詳細や、スケジュールなどは公式サイトでご確認ください。

<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016 開催概要>

■会期: 2016年7月16日(土)~7月24日(日)B3poster_0519_OL
■会場: SKIPシティ 映像ホール、多目的ホールほか(川口市上青木3-12-63)
彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市上峰3-15-1)
[7/17、7/18のみ]
こうのすシネマ(鴻巣市本町1-2-1エルミこうのすアネックス3F)[7/17、7/18のみ]
■主催: 埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
■公式サイト:www.skipcity-dcf.jp

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