SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016開幕!

『話す犬を、放す』熊谷監督、つみきみほ、田島令子らが登壇

OP集合写真 7月16日(土)、13回目となるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016のオープニング・セレモニーが、埼玉県川口市のSKIPシティ映像ホールで行われた。コンペティションでノミネートされた監督や審査員など世界中から沢山のゲストが登壇し、9日間にわたる映画祭が華やかに開幕した。

上田清司

上田清司埼玉県知事

上田清司埼玉県知事(SKIPシティ国際映画祭実行委員会会長は挨拶の中で、これまでこの映画祭から、多くの若手監督が飛び出し、国際社会で素晴らしい評価を受けてきたこと、今年も世界中の才能ある監督たちが、このSKIPシティで花開くことを心待ちにしていると、期待を述べた。

また奥ノ木信夫川口市長(SKIPシティ国際映画祭実行委員会 副会長)は、オープニング作品『話す犬を放す』が本映画祭短編部門の出身者であり、また今年から新たな試みとして、ベルリン国際映画祭で高く評価された『長江図』と『I PHONE YOU』の中国映画2作品を特別招待作品として上映するなど、こういった作品にもぜひご注目していただきたいと述べた。また川口市の町内会などによって企画されているさまざまなイベントの紹介をし、本映画祭が地元に密着したユニークな映画祭であることを、アピールした。

八木信忠

八木信忠総合プロデューサー

つづいて、本映画祭の八木信忠総合プロデューサーは、日本放送協会の電波を関東一円に発信するアンテナの土地として始まったこの土地が、戦後SKIPシティ彩の国ビジュアル・プラザとなり、その元々の目的のひとつに、優れた映像クリエイターの輩出ということがあったこと、その理念がこの映画祭にあることを説明。「外国では若い人たちにもお金を出していい作品を作らせようというプロジェクトがあり、財政的にも余裕があるなかで、いい作品を作っているということを聞いています。日本でもそれができないかということで、去年から映画祭出身監督の新作を映画祭実行委員会がプロデュースするプロジェクトを始めたわけです。去年は『鉄の子』今年は『話す犬を、放す』を作っております。これをきっかけに映像作家として大いにはばたいてほしいと祈念しております」と、映画祭へ期待を込めて挨拶を締めた。


 
話す犬を、放すチーム本映画祭のオープニングは、本映画祭短編部門出身者熊谷まどか監督の『話す犬を、放す』がワールド・プレミア上映された。「人はもっと自由になれる」というテーマのこの作品は、レビー小体型認知症を患った母親と娘の物語だが、難病ものというよりは、女性たちが、日々の暮らしの中で、自己の存在価値を模索する内容となっている。オープニング・セレモニーの後、上映に先立ち、本作に出演のつみきみほさん、田島令子さん、木乃江祐希さん、熊谷まどか監督による舞台挨拶が行われた。

熊谷まどか

熊谷まどか監督

 熊谷まどか監督はこの作品について、「着想のベースは、母がレビー小体型認知症に診断されたことでして、親も老いるんだなということをしみじみと思ったことにあります。老いるということは、赤ちゃんに近づいていくんだなということを目の当たりにしたこと、認知症の勉強をしてみると、世間一般に思われているものは、限られたものなのだなということがわかり、そんな経験に基づいて脚本を書きました」と語り、その一方「私は大阪のオバちゃんだし、私の母もヒョウ柄のスパッツをこよなく愛するような大阪のオバちゃんで、つみきさん、田島さんが演じたような可愛い母娘ではないので、そこは実在の人物とは一切関係ございません」とおどけて見せ、会場を笑わせた。

つみきみほ

つみきみほ

自分の役柄と撮影現場の雰囲気について、つみきみほは「私も10代からこの仕事をしていますが、色んなことに興味があって、寄り道ばかりしているので、売れない女優という役にはちょっと共感していました。器用に色々なことを乗り越えられないことにも共感しつつ、でもたくましいという部分も自分に似ているかな、などと思いながら演じていました。認知症のことについては、監督が深刻というよりは、明るくという話をされていたので、そのことを心がけました。何か聞くと、監督は本当に大阪のオバちゃんていう感じで、いつも面白い形で答えてくださるので、常にドキドキしつつも、監督とお話するといつも安心感があって、楽しい現場でした(笑)」と笑顔で語った。

田島令子

田島令子

田島令子はレビー小体型認知症という難しい役柄について「私の母も実は認知症です。私も明日は我が身なのですね(笑)うちの母は物忘れがひどくて、何回も何回も同じことを聞くのですが、レビー小体型認知症というのはそれとはまた違うので、わからない時は監督さんにお聞きし、その指示に身を委ねて演じさせていただいたんです。監督は基本はコメディだとおっしゃっていたので、親子関係を演じるのに当たっては、もちろん喧嘩もしますが、基本明るく未来に向かって生きていこうという感じで、楽しくそして真剣に、緊張感を持ちつつ演じました」と、その役作りを披露した。

田島さんとつみきさんの親子関係は、とってもナチュラルでしたね、というMCの感想に、熊谷監督は「いい意味でお二人せっかちさんのところがあって(笑)自然と親子の雰囲気を作って下さいました」と二人の共通点を披露。つみきは「現場では田島さんに甘えさせていただきました」と言うと、田島は「つみきさんのせっかちと言ったらホントに(笑)座っている時なんかないの。ホントにどっかいっちゃうの(笑)皆んな打ち合わせしているに、現場に行っちゃうのよ(笑)」と、温かいお母さんといった目で、そのせっかちぶりを語った。

木乃江祐希

木乃江祐希

特別にキャラクター設定をしたという、木乃江(このえ)祐希が演じる、子育てをしながら活躍する若い映画監督について熊谷監督が「私が普段仲良くしている一世代下の女性監督たちは、皆さんとてもパワフルなんですね。子育てしながら映画もあきらめずにガンガンやって、それを見ると、ものすごくあっぱれだなぁって思うので、その彼女たちの姿を託しました。多分木乃江さん自身にも、お芝居も頑張り、劇団も立ち上げみたいなパワフルなところがあるので、ごく自然な感じでそれが出ているんだと思います」と話すと、木乃江は「私自身の、お芝居を頑張っていきたいという気持ちをすべて投影させて演じました。最近、自分ひとりで“コノエノ!”という劇団を立ち上げました。それもこの役の影響です」と、明かした。

最後に、各人が映画について次のようにアピールした。

木乃江「作品を観て、母というのもひとりの不器用な女であるというのを感じました。個人的には、母のことを母としてしか見ていませんが、母にも色々あるでしょうし、逆に私にも母には見えないことがあるでしょう。映画の中の母娘の姿に、2人の不器用な女の闘いというか、戦友のようなものを見させられた気がして、私は母にこの作品を見せたいなと思いました」

田島「チロという役の雌犬が出てくるのですが、彼女に女優賞を差しあげたいです。監督を困らせることが何もなかったみたいな、本当に素敵な犬です」

つみき「皆さんのそれぞれの視点で、楽しんでいただけたらいいなって思います」

熊谷監督「私自身の初めての長編作品で、短い撮影期間中、私自身がとっ散らかって、テンパッてしまう場面がいっぱいあったんですが、素晴らしいキャストとスタッフの皆さんで心をこめた結果が本作ですので、私が作ったというよりは、すごいものができちゃったなという感じでおります。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。母は、関西に住んでいるので、今すぐは観られないけれど、機会があれば観て欲しい」

深刻な内容を扱っていながらも、明るく前向きな本作の撮影の雰囲気をそのまま持ってきたかのような、登壇者の和気あいあいとしたムードが会場にもそのまま伝わり、温かい雰囲気に包まれながら舞台挨拶は終了した。なお、『話す犬を、放す』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016のオープニング作品として上映された後、今後劇場での公開も予定されている。



『話す犬を、放す』
<STORY>話す犬を、放す母の幻視に隠された想いとは?「もう一つの人生」を思い描いたことのある
全ての人に、ユーモアと涙で寄り添う人間賛歌。
売れない女優レイコのもとに、ある日、昔の仲間で人気俳優の三田から映画出演の話が舞い込む。しかし、母・ユキエがレビー小体型認知症を発症し、かつての飼い犬・チロの幻視に悩むようになってしまう。女優としてのキャリアと、母との生活を両立させようとするレイコだが…。
<2016年/日本/84分>
監督・脚本:熊谷まどか 出演:つみきみほ、田島令子/眞島秀和、木乃江祐希
製作:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ ©2016埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ

<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016 開催概要>

■会期: 2016年7月16日(土)~7月24日(日)B3poster_0519_OL
■会場: SKIPシティ 映像ホール、多目的ホールほか(川口市上青木3-12-63)
彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市上峰3-15-1)
[7/17、7/18のみ]
こうのすシネマ(鴻巣市本町1-2-1エルミこうのすアネックス3F)[7/17、7/18のみ]
■主催: 埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
■公式サイト:www.skipcity-dcf.jp

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