ファティ・アキン監督「ソウル・キッチン」は、ハンブルグ発のゴキゲンなコメディー

多民族が暮らす港町・ハンブルグにある “ソウル・キッチン” という名のレストラン。伝説の音楽番組 “ソウル・トレイン” をもじったその店は、“音楽命”の若きオーナーシェフが切り盛りする常連客のたまり場だ。そこにはハンブルグの老若男女が集ってくる。


なんて遊び心に溢れた映画なのだろう。
“世界三大映画祭を制覇した若き巨匠” という肩書を、良い意味で裏切ってくれる脱力系コメディだ。監督ファティ・アキンの名を世界に轟かせた『愛より強く』(04)や『そして、私たちは愛に帰る』(07)が好き、という人は少々面食らうかもしれない。
アキン監督いわく、<愛><死><悪>をテーマにした三部作の最終章を撮る前に、どうしても故郷ハンブルグの「今の空気」をフィルムに残しておきたかったのだという。

「監督、好きなもの全部入れちゃいました?」という感じで物語は何でもアリの様相を呈しているが、それも多民族都市ハンブルグを象徴していると言えるのかも。終わってみれば、ムダなシーンなど一つもないとわかるのだが。コメディと一口に言っても、ジャッキー・チェンのカンフーを連想させる調理シーンであったり、ダンスシーンではチャップリンや無声映画のエッセンスが感じられたりとバラエティに富んでいる。

他のアキン作品同様、登場人物のキャラクターがきっちり作り込まれていて、それぞれが独自の輝きを放っている。そして、とにかく濃ゆいのだが、きっとお気に入りのキャラクターに出逢えるはず。

自分たちの愛すべき居場所を守るため、あらゆる困難と奮闘する“ソウル・キッチン”の人々。本作は、現在も都市開発が進むハンブルグへの想いを込めた、アキン監督のソウルが感じられる作品だ。本国ドイツでは、公開2カ月で130万人を動員し大ヒット。
1月22日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー!

おススメ度:★★★★☆
Text by 鈴木こより

▼『ソウル・キッチン』作品データ
監督:ファティ・アキン(『そして、私たちは愛に帰る』『愛より強く』)
出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ ほか
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/soulkitchen/
制作:2009/ドイツ・フランス・イタリア/35mm/1:1.85/99min/ドルビーSRD

トラックバック-1件

  1. Tweets that mention ファティ・アキン監督「ソウル・キッチン」は、ハンブルグ発のゴキゲンなコメディー : 映画と。 -- Topsy.com

    […] This post was mentioned on Twitter by 映画と。 and 初穗, 映画と。. 映画と。 said: ファティ・アキン監督「ソウル・キッチン」は、ハンブルグ発のゴキゲンなコメディー – http://bit.ly/eif5eK […]

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)