エクス・マキナ

男を翻弄する人工知能は何者なのか?

main 人工知能(AI)はどこまで人間に近づけるのか。あるいは人間より優れた存在になるのか。今年3月、囲碁のAIアルファ碁が、世界で最も強い棋士の1人と言われるイ・セドル九段を圧勝したという衝撃の出来事があった。私は囲碁には全く疎いのだが、1回の対局で考えられる局面の数は「10の360乗」通りもあって、それはチェスや将棋よりもけた違いに多い(らしい)。ゆえにコンピューターが人間に勝つのは、早くても10年後と思われていたという。だが、こんな事態が生じると、もはやAIは人間の頭脳を凌ぐ存在なのであろうか。人間の仕事もやがてAIに奪われるのではないかと危惧する声もある。

 かのスティーヴン・ホーキング博士もAI開発への警鐘を鳴らしているが、私には正直なところ、そのようなことが現実になるという指摘がピンとこなかった。AIと話したことなんかないしなぁ・・・と思うと現実味に欠ける。しかし本作『エクス・マキナ』ではAIの脅威の根源になりうるものがあまりにも我々の身近に浸透していることを描いており、それはアルファ碁よりもはるかに背筋の凍る思いがした。

 本作のあらすじはこうだ。ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は検索エンジンで有名なIT企業のプログラマー。ある時、会社の抽選会に当選し、賞品として社長ネイサン(オスカー・アイザック)の人里離れた邸宅に1週間滞在することとなる。だがその邸宅とはAIの研究施設であり、ネイサンはケイレブに、彼がつくった魅惑的な女性型ロボット・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)に搭載されたAIに対する実験(チューリング・テスト)を依頼する・・・。

 ケイレブはエヴァと会話を重ねるうちに、機械というより人間、それも女性として意識するようになる。そしてエヴァもまた彼を理解し、好意を示す。おまけにネイサンは「エヴァはセックスもできる」とケイレブを煽るような発言まで。家族も恋人もなく、孤独で(見た目)モヤシ系・24歳の若者の前に、自分を分かってくれる超美形の女性が現れたらどうだろう。エヴァの吸い込まれるような瞳に見つめられたら、恋をし、心かき乱されてしまうのは当然の成り行きとも言える。そしてエヴァはケイレブに告げる。「私をここから出して。あなたと一緒に逃げたい」と。

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  1. 映画感想 * FRAGILE

    エクス・マキナ/人工知能は「愛」を理解するか?

    エクス・マキナEX MACHINA/監督:アレックス・ガーランド/2015年/イギリス あなたが「選べ」と言ったのだから 輸入盤Blu-rayで鑑賞。賞を獲ったこと以外は何も知らずに見ました。 あらすじ:AIをテストします。 ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は抽選で社長ネイサン(オスカー・アイザック)の別荘へ行って、AIのエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル )と会います。 ※ネタバレしています。 どうなるかとかハッキリ書いていませんが、ネタバレしてると思ってください。おすすめポイントドーナル・グリーソ…

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