ちはやふる 上の句/下の句

「青春全部懸かけた」高校生の熱量に突き動かされる
(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会  (C) 末次由紀/講談社

(C) 2016 映画「ちはやふる」製作委員会
 (C) 末次由紀/講談社

そんなことで上の句は太一と机くんに見事に泣かされてしまうが、いよいよ下の句では、「なんでかるたをやるんだろう?」という主題が千早と新にシフトしてくる。上の句で個人→集合体→チームへの変遷を見せたが、その屋台骨だった人間が揺らいでいくのだ。新がかるたをやめたと知り、動揺する千早。何とかしなきゃと言う思いが先走り、いつしかそれは部内に不協和音を生じさせることになる。

ここで効いてくるのが外部の存在だ。強敵・北央学園エースの須藤(清水尋也)はことごとく良い場面をさらって行った。先輩たちが築き上げた伝統と誇り、東京代表としての意地。このことは、かるた部を作った千早自身の責任につながる。作るのは簡単、維持するのは大変なのがチームと言うもの。迷う千早に喝を入れたのは、まさしくこの「ドS」男だった。もう一つ、忘れてならないのは瑞沢高校の吹奏楽部(あの場面の「威風堂々」に心動かされない者などいるだろうか)。チームであることの強さと熱量。それに対し、全国大会で登場する百戦錬磨のクイーン若宮詩暢(松岡茉優)が、そんなのお遊びや、と全否定しにかかる。

「団体戦は個人戦、個人戦は団体戦」。下の句は、チームから個を建て直す過程を提示しつつ、結局は己自身、個の闘いからも逃げられないことを示唆する。自分で結論を出していくしかない。名人である祖父を失い、かるたをすることができなくなってしまった新に師匠は言う。「君にとっておじいさんの存在が大きかったのは分かる。でも、かるたをやる理由は一つじゃなくていい」。

ところで、キャストの舞台挨拶で続編制作の発表があったと知り、なおさら下の句の内容に合点がいった。映画ではまだ描かれていない、原作「ちはやふる」の重要な要素……「才能と闘う覚悟」が続編では描かれるはずである。圧倒的な才能を前に七転八倒しながら、各人が自分の闘い方、あるべき姿を追求していく。「青春全部かけたって勝てない?かけてから言いなさい」。どうすべきかという答えなんて、後から分かること。「ちはやふる」の真骨頂は、まだまだこれからだ。

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