『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督インタビュー
–中国での撮影で一番苦労したことは?
クァク:俳優たちのスケジュールにあわせるのが一番大変でした。今回は撮影期間が39日間と決まっていて、それ以上は撮れない状況だったんです。このうち、俳優の稼働日が30日で、ドン・ダーウェイは、あらかじめ決まっていた他の作品の撮影に抜けなければいけない日もあり、なるべく合わせるように努力をしましたが、なかなか苦労しましたね。体力的にも大変でした。39日間、1日も休まずに撮りました。
中国では休みなしで撮るのが当たり前。韓国の場合は、1週間のうち4日撮影したとすると、3日間は休みや準備にあてる。でも、そんな考えで中国に行ったら全然ダメ。『楊貴妃』のときは、韓国と同じ感覚で行ってしまって失敗しました。無錫、北京、蘇州、蘭州ともう1ヵ所の計5ヵ所で撮ることになっていたのですが、スタッフもものすごく多く、彼らが次の撮影地に移動する手段は車なので、1週間ぐらいかかってしまう。俳優や監督は飛行機に乗って3時間ぐらいで移動できますが…。時間がかかれば、それだけ費用もかさみます。今回は、ほとんど厦門(アモイ)で撮影して、300キロほど離れた別のロケ地と2往復するだけで済みました。
–ほかに韓国との違いはありますか?
クァク:韓国では、たとえば釜山で1週間撮影をして、それからソウルに移って、しばらく間が開いてからもう一度集合…というケースがあるとします。すると、撮影がない間のスタッフの食費や宿泊費を出す必要はありません。中国の場合は、一度撮影がスタートしたら、スタッフも俳優もみんな合宿するような形になるため、宿や食事もすべて提供する。だから、撮影をしないと損が出るということで、休みなく撮るのです。それも国土が広いことが原因なんですけどね。
–近年、韓国の監督が中国で映画を撮るケースが多いですが、それは韓国の監督の何が中国に求められているのだと思いますか?
クァク:中国は、映画の製作本数は多いのですが、監督の数が少ないという事情があります。それに、韓国映画は洗練されているという印象も持たれてるんですよね。だから、韓国の監督を呼んで演出してもらうことが好まれるようです。
–監督だけでなく、韓国の俳優も最近はよく中国の映像作品に出演していますね。
クァク:中国の俳優のギャラはものすごく高いのです。それに比べて韓国の俳優のギャラは安く、だからよく中国に呼ばれる。今回のジョウ・シュンのギャラは、日本円で1億5千万円ぐらい。日本でもそこまで手にする方はなかなかいないと思いますが、これでも彼女にしては額が少ない方です。この映画は低予算だったので、彼女のギャラだけですごい割合なんですよ。そういうことを考えると、韓国の監督や俳優は中国市場で競争力があると思われているのでしょう。私の場合は『猟奇的な彼女』が中国で成功したというのも一因かと思います。
ただ、さっき中国では監督の数が少ないと言いましたが、最近は新人監督がたくさん出てきているので、もしかしたら少しずつ、韓国の監督と入れ替わることになるんじゃないかと(笑)。実際にもう、そういう風になっているとも思います。