【TNLF】ヴィクトリア

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品解説】

ヴィクトリア詩人のヨハンネスは、幼い頃から領主の娘のヴィクトリアを想い続けていた。素直になれないヴィクトリアもまた、彼への想いを募らせていたが、父親によって別の男との結婚話を進められてしまう…。原作は、ノーベル文学賞作家クヌート・ハムスンの自伝的小説。自尊心ゆえにすれ違いを繰り返す二人の、胸を焦がすほどの純愛が綴られていく。(トーキョーノーザンライツフェスティバル公式サイトより)

【クロスレビュー】

藤澤貞彦/ヴィクトリアへ肩入れし過ぎ度:★★★☆☆

2人が素直に愛を認めあえるのは、ノルウェーの森と都会の公園だけだった…この原作がヨハンネスの主観の物語になっているのに対して、映画ではヴィクトリアの気持ちが事細かに描かれている。原作では不可解だったヴィクトリアのほうが素直に見え、ヨハンネスのほうが意固地に見える。そのため、どうしてもヨハンネスの分が悪い。その結果として、悲劇性がより高まったとは言えるのではあるが…。ヨハンネスの悲劇は、彼が救えなかった女性が素晴らしい人だったのに対して、救った少女が能天気で平凡な人だったこと。それはヴィクトリアと婚約者の関係性とも対になっている。逆に言えば、2人はお互いに平凡でなかったからこそ、気もちが激しく燃え、反発しあったのである。ゆえに2人の間に立つ壁が、必ずしも身分、金銭、世間体だけとも言い切れない部分があり、そこにこの物語の普遍性があるとも言える。映画は原作のそうしたエッセンスは、きちんと掴んでいた。

鈴木こより/北欧版”身分違いの恋”もやっぱり鉄板!度:★★★★☆

ヴィクトリアとヨハンネスは幼なじみで相思相愛。しかし時は19世紀、お嬢のヴィクトリアは親の決めた相手と婚約させられてしまう。一方、貧しくても野心家のヨハンネスは、ヴィクトリアへの情熱を詩にしたため諦められずに悶々としていた。やがて別々の道を歩むように見えた矢先、事態は思わぬ展開を迎える。
“身分違いの恋”の傑作「タイタニック」の二人を思わせるような境遇だけど、本作のヒロインの方が感情移入しやすかった。自分の感情に従って生きることが許されなかっただけで、相手の言葉や態度への反応は素直な印象を受けたし、受け入れ難い人生にも向き合おうとしただけで、愛に不誠実だとは思えない。運命に逆って強く生きるヒロインも魅力的だけど、この物語も強い輝きを放っている。彼女は彼女なりの方法で愛を手に入れるのだから。主張しすぎることなく、若い二人の瞳の奥から秘めた想いが切ないほど伝わってくる。行間にある感情表現が的確なのだろう、原作のヴィクトリア像よりも好感が持てた。


▼トーキョーノーザンライツフェスティバル 2016▼
Key Visual「北欧映画の一週間」
会期: 2016年2月6日(土)~2月12日(金) ※音楽イベントは別途開催
会場: ユーロスペース他
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト: http://www.tnlf.jp/index.html
(他にもイベントが盛り沢山。詳しくはこちらで)

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