不屈の男 アンブロークン

アンジェリーナ・ジョリー監督の反戦と平和への思いが込められた一作

fukutsu_sub5ジョリー監督は、主演のジャック・オコンネルをはじめドーナル・グリーソン、MIYAVIなど有望な若手俳優を起用し、UNBROKENな男の波乱に満ちた生涯を丁寧に描き出した。ただ、彼女は本作を「赦しの物語」としているが、ルイの“赦し”に至る経緯の描写が貧弱であることは否めない。赦しを主軸とするならば、終戦後から長野五輪(1998年)の聖火ランナーとなるまでのルイをもっと描くべきだったろう。捕虜仲間に「生き延びることが復讐だ」と言われたものの、それがどう“赦し”へと変化するか、その境地に至るまでの葛藤はなかったのか等のほうをもっと見たかった。その点に関してはいくらかの不満も残る。

ただ、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使を務めるなど社会貢献への意識が非常に高いジョリー監督。ボスニア内戦を背景に民族間の紛争がもたらす悲劇を描いた監督処女作『最愛の大地』(11)でもそうであったように、彼女の平和を希求する思いに揺るぎはない。確かに渡辺による粘着質な虐待シーンは、日本人としては気分のいいものではない。だが繰り返しになるが、それだけを伝える映画ではない。見ないうちに「反日とはけしからん!」と憤る前に、まずは作品を見てつくり手の思いを感じてもらいたいと思う。


© 2014 UNIVERSAL STUDIOS
2016年2月6日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

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