パディントン

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品解説】

main原作は、40か国語以上で翻訳され、全世界で3500万部の売り上げを誇るマイケル・ボンドのベストセラー「パディントン」シリーズ。『ハリー・ポッター』シリーズのプロデューサーが贈る、映画史上もっとも紳士なクマの物語!

【ストーリー】

イギリス・ロンドン。 真っ赤な帽子を被った小さな紳士が、家をさがしにはるばるペルーからやってきた。 丁寧な言葉づかいで道行く人に話しかける彼だったが、なぜか誰からも相手にしてもらえない。それは・・・彼が”クマ”だから! やっと出会った親切なブラウンさん一家に”パディントン”と名づけられ、屋根裏に泊めてもらうことになる。そうして始まった初めての都会暮らしはドタバタの連続! それでも、純粋で礼儀正しいパディントンは、やがて街の人気者になっていく。そんなある日、彼をつけ狙う謎の美女・ミリセントに誘拐されてしまう! 果たしてパディントンは無事に家を見つけることができるのか―!? そして、そこには、もっと素敵な何かが待っていた・・・!

【クロスレビュー】

鈴木こより/ニコール・キッドマンの悪女ぶりにも注目度:★★★★☆

さすが「ハリーポッター」の製作陣が作ったというだけあって、パディントンの動きや表情がリアルで愛らしい。ロンドンの街を俯瞰するショットもそれっぽくて、ワクワク感を募らせる。ロンドンはペルー生まれのパディントンが憧れ、カルチャーショックを受ける街。その街との出合いのシーンは印象的で、想像との違いに驚いたり、戸惑ったり。ロンドンももう一人の主役として豊かで奥深い表情を見せてくれる。
この映画の魅力は、この物語に親しんできた人の期待を裏切らない世界観がある一方で、映画ファンを楽しませる仕掛けも怠らないところ。とくにニコール・キッドマンが元夫(トム・クルーズ)主演の「ミッション:インポッシブル」のパロディを嬉々として演じるくだりは、なかなか粋というか英国流のユーモアが感じられて可笑しかった。

外山香織/マーマレードジャムが食べたくなる度:★★★★★

正直なところ、パディントンと言うと「パディントン発4時50分」しか思いつかないくらい「くまのパディントン」に関する知識はなかった。が、原作のことを知らなくても全く問題ない。もちろん子どもも楽しめるけれど、大人もハッとさせられることが多いのではないだろうか。突き詰めていけば「家」とはなんであろうかということ。屋根があるだけでは家とは呼べない。パディントンが相談に行った骨董屋のおじさんも「自分も移住者だが、当初は体はここにあっても心はここになかった」と語る。houseがhomeになり、homelandと呼べるようになるまでには何が必要なのか。戸惑いながらも彼を受け入れていくブラウン家の騒動に笑いがこぼれるが、英国の移民問題に目配せしているのは間違いない。そして本作は、困難な時にあっても自信と尊厳を持って生きることの難しさにも言及する。パディントンが展示用の剥製にされることは、尊厳を奪われることに他ならない。最終的に彼を救ったのは、どんな時でも紳士的にふるまうことの大切さと、いざというときの備え(マーマレードジャムのサンドイッチ)を教えたくまのおじさん・おばさんなのではないかとも思えた。色々な意味で示唆に富む快作。


『パディントン』全国公開中!
© 2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington
Bear™,Paddington™ AND PB™ are trademarks of Paddington and Company
Limited

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