【TIFF】ディーン、君がいた瞬間(とき):舞台挨拶

アントン・コービン監督「本物とのギャップを埋めるのは俳優の才能。デイン・デハーンにはそれがある」

life_movie24歳でこの世を去った青春のアイコン、ジェームズ・ディーン。その華々しい成功と突然の死は、60年経った今でも伝説として語り継がれている。彼にいったい何があったのだろうか。死の直前、ディーンはある写真家と出会い、逃避行とも言える2週間の旅に出かけている。この知られざる実話を、自身もフォトグラファーであるアントン・コービン監督が映画化した。コービン監督は長編デビュー作『コントロール』でも若くして急逝したカリスマミュージシャンの心の闇を描き、その素顔に迫っているが、今作でもディーンの繊細な感情を丁寧に映し出し、生と死の空気が濃厚に漂う作品を作り出している。
「ディーンとカメラマンの関係性にとても共感した」という監督の熱い想いに応じ、その空気感を見事に体現したのはハリウッドの未来を担う2人、若手実力派のデイン・デハーンと、大ヒットシリーズ「トワイライト」のロバート・パティンソン。コービン監督は「ディーンを演じるのは彼しかいない!」とデインを熱心に口説いたというが、他にも、来日時の舞台挨拶で映画化への想いやエピソードについてたっぷりと語ってくれたので、その模様を(ほぼ)ノーカットでレポートします。

ーーこの映画を監督しようと思った理由について
ほとんどの方がジェームズ・ディーンの名前に引っかかると思いますが、私はカメラマンのデニス・ストックに興味を持ちました。私自身40年以上もカメラマンとして有名人の写真を撮ってきましたが、デニスにはとても共感できました。この映画はカメラマンとセレブの関係の話であり、両者のバランスの話です。たまたま被写体がジェームズ・ディーンだったということで、話がより面白くなってるわけです。

ーージェームズ・ディーンの存在とは
私は1955年、彼が亡くなった年に生まれました。映画の中できちんと描けていればいいなと願っているのですが、ジェームズ・ディーンは50年代半ばにおいて、とても重要な存在でした。 第2次世界大戦中に育った人たちが戦後10年を経て、初めて自分たちの世代の声を見つけたんですが、その声というのが、ジェームズ・ディーンだったのです。

ーー被写体との信頼関係について
信頼関係は重要です。信頼関係があると家族のような関係になって、他のカメラマンが入り込めないような面白い写真を撮ることができます。実際に、私も非常にユニークな写真を撮ることができました。そのことがこの映画の中でも起こっています。この2人の間には特別な友情が生まれ、デニスはジェームズの生まれ故郷という特別な場所で写真を撮ることができたわけです。

ーー二人を演じた俳優について
ジェームズ・ディーンというのは有名なアイコンといえる存在ですが、それを演じるのはとても難しいと思います。デインは「ジェームズ・ディーンが大好きなので僕にはできない」と、最初は僕に会ってもくれませんでした。こんなに背が高いのに(192cm)、見てもくれないなんて・・・(笑)。でも、共通の友人であるメタリカのドラマーがデインを説得してくたんです。最終的には出演してくれることになりましたが、デインがいなかったら僕は本当に困っていたでしょうね。彼はどんなキャラクターを演じても「本当にこの人は存在するんだ」と思わせてくれる俳優です。ある程度まで外見を似せることができても、やはり本物ではない。本物とのギャップを埋めるのは俳優の才能ですが、デインにはその才能があると思います。

ロバートは「トワイライト」という”小さなカルト作品”で成功しましたが(笑)、その後、彼は俳優として成長できるような面白い役をずっと演じています。つまり、彼は自分の才能を証明したいわけです。デニスというカメラマンも、カメラマンとして自分の才能を世の中に知らしめたいと思っているわけで、2人の考え方は非常に似ています。ロバートはとても直感的な俳優で苦悶も抱えていますが、それも役と同じで、まさにこの役にぴったり。理想的でした。

ーーこの映画に込めた想い
この映画は大きなメッセージを伝える映画ではありません。むしろニュアンスを楽しんでいただく映画だと思います。原題は「LIFE」ですが、デニスが写真を載せた雑誌の「LIFE」であり、人生でもあります。誰かに出会って自分の人生が影響される。また映画では直接言及されていませんが、死というのも底辺に流れています。ジェームズ・ディーンはこの映画のエピソードがあった直後に亡くなっています。私自身、この映画を作っていて微妙なニュアンスを出すところも楽しみましたし、カメラマンと被写体の関係を2人の役者が素晴らしい演技で見せてくれています。

ーー日本で気になるアーティストは?
カメラの世界に限って言うと、森山大道さんとかアラーキー(荒木経惟)にお会いしてみたいし、写真に撮ってみたいです。

ーー日本の印象について
6回ぐらい来日しています。前回は『コントロール』という映画(のプロモーション)で来ました。その前はカメラマンとして撮影で、U2やスージー&ザ・バンシーズと来日しました。毎回来るたびに驚かされるし、素晴らしい都市だと思います。ハイテクとローテクのコンビネーションというか、高い技術もいいけど人々や街の色合い、食べ物も素晴らしいです。僕はベジタリアンで日本の食べ物のファンです。来るたびにすごく楽しいので、もっと長く滞在できればと思います。
(於新宿バルト9、東京国際映画祭2015「特別招待作品」上映前の舞台挨拶にて)

12/19より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

Caitlin Cronenberg, (c)See-Saw Films

Caitlin Cronenberg, (c)See-Saw Films

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)