【FILMeX】第16回東京フィルメックス開幕。

オープニング作品は『ひそひそ星』。園子温監督、人生への思い、福島への思いを語る

審査員集合

左よりグレゴリー・ガジョス、齋藤敦子、イ・ヨンガン、塩田明彦各氏

第16回東京フィルメックスが、11月22日、東京・TOHOシネマズ 日劇1にて開幕した。
「映画愛に溢れる人々が集まるフィルメックス。東京フィルメックスは映画の力を信じる国際映画祭です。皆様楽しい日々をご一緒いたしましょう」と、林加奈子ディレクターの開幕宣言でスタート。続いて、審査員の塩田明彦監督、映画評論家の齋藤敦子さん、アド・ヴィタム買付・編成担当のグレゴリー・ガジョスさん、釜山映画祭ディレクターを務める審査委員長イ・ヨンガンさんが紹介された。イ・ヨンガン審査委員長が「ここにいらっしゃる審査員の皆様といい作品を選びたいと思います」と挨拶し、開会式は終了。審査員はコンペティションの10作品を審査、28日、最優秀作品賞、審査員特別賞が選ばれ授与される。

オープニング作品『ひそひそ星』に園子温監督、神楽坂恵が登壇

©SION PRODUCTION

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今年のオープニング作品は、園子温監督の『ひそひそ星』。宇宙宅配便の配達アンドロイドの主人公鈴木洋子が、宇宙を旅するSFである。それぞれの惑星のロケを、3・11の傷跡が残る福島県浪江町、富岡町、南相馬でされたことにも大きな意味がある。人々がいなくなった空っぽの商店街、かつて街があったはずの荒涼とした草むら、建物の残骸などを、モノクロ映像で詩的に表現している。そこに感じられるのは人生の儚さ。そして今生きている人の自分の人生に対する思い。映画の上映後、園子温監督と主演の神楽坂恵が登壇し、Q&Aが行われた。

本作は1999年に書いた脚本と絵コンテを元に製作されているという話を聞いたのですが、今これを作ることについては、どうだったのですか

園子温監督
「元々この作品は、自主映画時代に考えられた企画だったのですが、予算の都合がつかず途中で断念し、その代わりに『部屋THE ROOM』という作品を作ったのです。プロデューサーでもあり主演女優でもあり、僕の奥さんでもある彼女(神楽坂恵)は、自分の25年前の脚本を尊重してくれました。ただ、20代の時の自分は、僕にとってはすでに彼になっているのです。その彼に対して、君はそう思っているんだ。じゃ、君が映画を作ろうとする本能的衝動に対して僕はリスペクトするよ、という立場で映画を作りました」

神楽坂恵神楽坂恵
「プロデューサーとしてお金の管理もやったりしましたけれども、それはそれ、これはこれということで、プロデューサーとかいうのは関係なく、鈴木洋子という役を演じることに関して、いつも通り厳しく、追いこんでいただきました。引っ越しするたびに、この映画の絵コンテ、脚本とすごい量の荷物を運んでいたのですね。それがようやく作られて、公開できることになって、主演もさせてもらって、今はすごく嬉しい気持ちです」

当時の絵コンテと変わったところはありますか

園子温監督
「ロケーション的には変わりましたが、宇宙船の中は結構忠実になっていますね。当時は失敗を繰り返した人類の場所として、夢の島とかを考えていたのですが、何でこんなことになったのだろうということを考える場所として、今は福島にせざるをえなかったのです。また、『希望の国』を撮った時に取材でお会いした、仮設住宅に住んでいる人々、原発によって被害をうけた人々、津波によって人生が変わってしまった人たちに、敢えてこの映画に出演してもらったのですね」

一瞬だけカラーになるシーンにはどういう意図があるのですか

園子温監督
「福島で撮ったということが、今回とても重要です。カラーになった瞬間の場所って、かつては街だった所なのですよ。街だったところが年月を経て、草むらになっちゃったんですね。そこに青空かあって、海があって、緑があるというのを見て、直感的にこの風景はカラーにすべきだと感じました」

園子温監督月曜、火曜…日曜、月曜…と曜日が繰り返し曜日のテロップが出てくるところが『桂子ですけど』を思い起こさせたのですが

園子温監督
「当時はカツカツだったので、もしかしたらSF映画なんて撮れないまま死ぬかもしれないなと思っていました。それで自分が今撮れる範囲で、このアイデアを撮れればと思って作ったのが、実は『桂子ですけど』なんですね。この作品で、日常というのは宇宙的でもあり、常に永遠の繰り返しでもあり、それが気の遠くなるほど永遠であるという状況みたいなものを描きたかった。宇宙船の中で生きているのと、高円寺のアパートの部屋で一人暮らししている女性が生きているのって、実はあんまり変わらないのですね」

宇宙船の中の、蛇口からポタリと落ちる水の音、誰もいない福島の街の中で響く空き缶をくっ付けた靴音などなど、音に気を使っているように見受けられるのですが

園子温監督
「音に関しては、ベルリン映画祭でアレクサンドル・ソクーロフの映画の音を聴いて、その繊細さにとてもショックを受けて以来、音は映画の半分くらい重要な位置を占めるものだという意識になりました。この作品はダビングに1年間かけました。そんなことする馬鹿はいないのですけれども」

人間だけしか住まない星、ヒソヒソ星で、主人公が細い廊下のようなところを通っていくと、障子越しに、人々の暮らしが影絵のように写ります。そのような表現にしたことについて、どういう意図があるのですか

園子温と神楽坂恵園子温監督
「日本のお葬式に回り灯篭というのがありますね。子供の頃、人が亡くなるとそれが必ずあって、その影が障子に写っているのを見て、なんか人生が過ぎていくのってこういうことかなと感じるところがあったのです。それで影絵で表すことによって、人間の儚さを表現しました。正直いうとこの映画のアイデアは、25年前はそこだけだったのです。けれども、福島でロケーションをしたことで、重層的な意味を持つことになりました。人がいなくなった廃墟に昼間ずっと立っていると、商店街には人がいないのだけれど、何か賑やかだった頃のことが彷彿されてくるという、そのイメージが加わりました。そこを出なければならなかった人々への思いですね。今の福島の街を映像に残しておこうという気持ちがありましたが、ロケ地は刻一刻と変わっていって、つい昨日まであったものが、ブルドーザーが入って、無くなってしまうのです。まさしく陽炎、影絵のように」

最後に郡山出身という観客から、以前『希望の国』を撮った時に、あと2,3本福島で映画を撮るとおっしゃっていたのですが、今はだいぶ福島のこと忘れている方も多いと思うので、またぜひ撮ってほしいという言葉に対して、園子温監督は「来年も福島で、ドキュメンタリーではなく、ドラマを撮りたいと思っております」と力強く答えて、Q&Aは終了した。なお、本作は2016年の5月に新宿シネマカリテで公開が予定されている。


▼第16回東京フィルメックス▼
期間:2015年11月21日(土)〜11月29日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇・有楽町スバル座
公式サイト:http://filmex.net/2015/

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