『さようなら』ブライアリー・ロングさんインタビュー

命に限りのある人間と死を知らぬアンドロイド。「二つの異なる時間の流れを通して“生と死”を美しく描いている作品です」

BL_2――ぎこちない人間関係が描かれる一方で、アンドロイドのレオナとは共依存の関係も感じられて、その対比も作品のアクセントになっていたと思います。

BL:一緒にいる時間が一番長いのはレオナなので、彼女との関係のほうが人間より親密でした。アンドロイドは相手をこういう人間だという判断をしないので、ターニャはレオナの前にいることが一番自分らしくいられるというのは皮肉っぽいですね。人間同士では話せないこともレオナとは話せることがありますし。

――ターニャがレオナに接するのはどういう感覚だったのでしょうか?私は実際にアンドロイドと直接接したことがないので、対話をする感覚がどのようなものなのか分からないのでお聞きする次第です。

BL:レオナは病弱なターニャの世話のために、彼女の両親が買ってくれたアンドロイドですが、例えば子供の頃に人形に特別な愛情を持つ子供っていますよね。そういう感覚に近いと思います。決して人間ではないけれど人間に近いもの・・・という感覚でしょうか。

sayonara_sub2――ターニャの最期も悲しいのですが、その場面は救済と安らぎが与えられたかのように美しくて息を呑みました。ちなみに、彼女の最期からさらにその先の、映画の結末までには、どのくらいの時間が経過していると思われますか?

BL:どうでしょう・・・。恐らく相当の時間が流れているとは思います。ただ人間のスパンでは百年、二百年はとても長く感じられるけれど、自然や地球のスパンで考えればあっという間の時間のはずです。死ぬことはないアンドロイドも同じ。この作品では二つの異なる時間の流れが描かれていて、それを通して“生と死”を美しく描いていると思います。

――ターニャに対してレオナが詩を朗読しますが、言霊といいますか、ことばの力が人を救済するのかな・・・とも思えた作品でした。

BL:本当に美しい脚本ですし、様々な解釈ができる映画だと思います。皆さんには一度とは言わず何度も見て、いろいろと考えてもらいたいですね。

<後記>
 ブライアリーさんにとってTIFF開催中の忙しい合間を縫っての取材となった。オックスフォード出で日本語はじめドイツ語、フランス語など数か国語を操る才媛ということで、自分との頭の出来の違いにドキマキしていたが、にこやかに丁寧に対応して下さって感謝。深田監督には「キツイ人に見える」なんてヒドイこと(?)を言われたというけれど、そんなことありません!とても穏やかで聡明な女性でした。

<プロフィール>
ブライアリー・ロング Bryerly Long
 1988年生まれ。米国ワシントンD.C.出身。ジュネーブ・ダンス・センター(スイス)や、マース・カニングハム・ダンス・プログラム(米・ニューヨーク)でダンサーとして訓練を受けた後、06年にオックスフォード大学日本語学部に入学、振付家・演出家としての活動を始める。09年2月に大学内のオーライリー劇場にて行われた新作劇のフェスティバルでは最優秀賞を受賞、同年5月には英国王立音楽大学、ロンドン・コンテンポラリーダンススクールの学生との共同制作による作品を発表するなどジャンルの枠を越えた活動を展開。10年7月に大学を首席で卒業後、俳優として青年団に入団。舞台・映画・CMなどで活躍中。主な出演作に『歓待』(10/深田晃司監督)、CF・コンコルド「心にコンコルドを」(11)、『踊る大宣伝会議Season2』(15/本広克行監督)、「夢を与える」(15/犬童一心監督)、「徒歩7分」(NHKBSプレミアム)などがある。ロボット演劇「さようなら」(10/平田オリザ演出)で同じ役を演じている。


2015年11月21日(土)より新宿武蔵野館他、全国ロードショー
©2015 「さようなら」製作委員会

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