【TIFF】残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品解説】

第26回山本周五郎賞を受賞した小野不由美(「屍鬼」「十二国記」シリーズ)の小説「残穢」(ざんえ)を、ミステリーの名手・中村義洋監督(『白ゆき姫殺人事件』『予告犯』)が映画化。予定調和を許さない予想外のラストまで、かた時も目が離せない。小野自身を彷彿とさせる主人公“私”には、人気実力派女優の竹内結子。“私”とともに調査を重ねる“久保さん”には、神秘的な魅力を放つ女優の橋本愛。初共演のふたりに加え、佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一ら個性的な出演陣が集結。ここに、いまだかつて見たことのない、戦慄のリアルミステリーが誕生する。(TIFF公式サイトより)

【クロスレビュー】

北青山こまり:怖いのになんですぐ引っ越さないのか理解に苦しむ度 ★★★★★

衣擦れの音、赤ん坊の声、奇妙な電話、開かずの間。日本の「怖い話」の定番モチーフしか出てこないし、ショッキングな場面も少ない。なのに、なんだか嫌~な感じのする出来事の積み重ねでじわじわ染みてくる怖さが、新しい。和室のあるアパートでひとり暮らしの方にはとてもお薦めできない一作です。竹内結子のちょっと疲れたオカルト作家ぶりと、橋本愛の美大生らしいナチュラルな佇まいがとてもよく、友人作家・佐々木蔵之介の軽快さには笑いも起こったりするのだが、彼らが追う怪奇現象は、やがて、のちの人間にはどうすることもできない「穢」にたどりつく。夫役の滝藤賢一がさらっと「過去になんにもない土地なんてどこにもない」というようなことを言うのだけど、昔起きたことを地層の下に封じ込めて生きてきた私たちは、そのうちほんとうに、地球上のどこにも住めなくなるんじゃなかろうか…。

鈴木こより:美人女優の恐怖に歪んだ顔が見たかっただけに残念度 ★★★★☆

『リング』や『らせん』などのJホラーと比べてしまうと映像的なインパクトに欠け、正直、拍子抜けした感は否めない。竹内結子と橋本愛が主役なだけに、美人が恐怖におののく顔というのも期待しすぎていたかもしれない。小野不由美の原作小説を知らないだけに、なんとなくワッと驚かされるようなベタな演出のホラーを想像していたが、本作は「見たくないけど、知りたくないけど、いや、やっぱり気になる!」という心理を刺激し、ジワジワとディープな場所へ誘ってゆくという類の映画だ。問題のある部屋、さらには土地の履歴を辿っていく過程で見えてくるエピソードの数々はニュースなどでも見たことのあるようなリアルなもので、最近引っ越したばかりの私にとって嫌な後味が残るもの。今はできるだけ思い出したくないというのが本音だ。


©2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会
107分 日本語 カラー | 2015年 日本 | 配給:松竹株式会社


【第28回東京国際映画祭】
開催期間:2015年10月22日(木)〜10月31日(土)
会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿、東京国立近代美術館フィルムセンター、歌舞伎座
公式サイト: http://2015.tiff-jp.net/ja/

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