人生スイッチ

映画と。ライターによるクロスレビューです

2015.7.23きっかけは、日々の憤りの爆発。
最悪のその先の、予想を超えた〈行きつく先〉を笑え!

第87回アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート
第67回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品作品
『アナと雪の女王』にダブルスコアの大差をつけて、アルゼンチン史上最大ヒットを記録した超異色傑作!!

【ストーリー】
私たちの日常の中には、切り替えてはいけないスイッチがある。
それは身近にあってうっかり押したときには、時すでに遅し。
何がきっかけで押してしまうのか、押したらどんな世界が待っているのかー
覗いてみよう。

7月25日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマライズ他 全国順次公開


【クロスレビュー】

6つのエピソードはどれも何かに怒ってイカれる人々の修羅場が展開するが、見終わった後は「あのエピソードが一番好き」「あれはあり得ない」などと誰かとあーだこーだ話したくなる作品だ。登場人物は総じて“やり過ぎ”で、つくり手側の「ここまでやるのか?」という突き抜けた感も潔い。殺伐とした空気が支配する昨今、何かに対するモヤモヤ感は程度の差こそあるが、多くの人が抱えているはず。何がきっかけでごく普通の人の負のマグマがどう爆発するか分からない。本作は「人の不幸は蜜の味」的な爆笑を誘いつつも、その一方で他人事ではないというある意味示唆に富んだ映画でもあった。ただ冒頭のエピソードは偶然とはいえ、あの不幸な事故を連想させ、それをどう受け止めるかで見る側に温度差が出るような気もしている。
(富田優子/★★★☆☆2.5)

怒涛の展開にボー然としながらも笑ってしまった。感情(怒り)のスイッチといっても、衝動的にブチ切れて押しちゃうスイッチもあれば、溜まりに溜まった復讐のスイッチ、また、あまり考えずに流れで押しちゃうスイッチもある。もちろん、納得できる正当な(?)スイッチもある。6つのエピソードで怒りのスイッチが入る“ツボ”にさほど違和感はなく、万国共通なのだな、と思わされる。が、やはりラテンの国の人々、その激しさは尋常ではない(とくに女性はホント怖い)。負のエネルギー全開で完全燃焼している彼らだが、それがだんだん清々しく見えてくるから面白い。日ごろ感情を抑圧している人ほど、観ていてスッキリするのではないだろうか。必ずや、お気に入りのエピソードがあるはず。
(鈴木こより/★★★★☆)

日本映画にも森田芳光製作総指揮・脚本の『バカヤロー! 私、怒ってます』という作品があったことを思い出した。しかしこちらは、さすがにラテンである。同じ怒るにしても激しさが違う。6つのエピソードそれぞれ怒りの性質にも個性があり、飽きさせることがない。川柳風にしてみると、1話「お返しを 忘れちゃいけない 誰にでも」 2話「猫いらず 恨みとともに 賞味期限はなし」 3話「追い越しは 笑顔ですれば 恨みっこなしよ」 4話「駐禁キップ なぜいつも 自分ばかりがと」 5話「交通事故 金を積んでも 罪は詰む」 6話「結婚式 悲喜こもごもとは いうけれど」挿話の半分が自動車絡みというのが、いかにも交通事故大国アルゼンチンらしい。買収、癒着は当たり前。本作がアルゼンチン史上最大ヒットとは、彼らも相当たまっているのだろう。
(藤澤貞彦/★★★☆☆)

人を見極めるのに「何に対して怒りを持つか」というのもポイントになると聞いたことがある。怒りの沸点が比較的高い自分としては他人の憤りを見て「なんでこんなことに怒るんだろう?」と思うこともあるが、『人生スイッチ』はそんな怒りの沸点を捉えたブラックコメディーだ。自分にされた仕打ち、嫉妬、復讐、他人の身勝手な行動、社会への怒り。怒りの要因は様々だし、爆発の手法もこれまたハジケている。ほとんどのエピソードは人が死んでたりするので道義的に観てしまうと苦しいけれど、コントとして観れば予想以上にスッキリ。特に冒頭のエピソードはA・クリスティの小説を想起させるような展開で思わず引き込まれた。
(外山香織/★★★★☆)


監督・脚本 : ダミアン・ジフロン
CAST :リカルド・ダリン/リタ・コルテセ/ダリオ・グランディネッティ
製作総指揮者:ペドロ・アルモドバル
上映時間: 122分
製作国: アルゼンチン・スペイン
配給会社 :ギャガ
(C)2014Kramer & Sigman Films / El Deseo
公式サイト http://jinseiswitch.gaga.ne.jp/

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