ボヴァリー夫人とパン屋

映画と。ライターによるクロスレビューです

bovery_mainフランスで4週連続興行成績第1位の大ヒットを記録!『屋根裏部屋のマリアたち』のファブリス・ルキーニ、『アンコール!!』のジェマ・アータートン主演。アンヌ・フォンテーヌ監督の“香りたつ”世界観が満載の、官能的でユーモラスな新感覚なドラマ。



【ストーリー】
パリから故郷ノルマンディーの美しい村に戻り、父親のパン屋を継いだマルタン。毎日の単調な生活の中で、文学だけが想像の友、とりわけ、ぼろぼろになるまで読みふけっているのは、ノルマンディーを舞台にしたフローベールの『ボヴァリー夫人』。そんなある日、隣の農場にイギリス人のチャーリーとジェマ・ボヴァリー夫妻が引っ越してくる。マルタンは、自分の作ったパン・ド・カンパーニュを官能的に頬張るジェンマに魅了され、日々、彼女から目が離せない。ところがジェマが年下の男と不倫するのを目撃したマルタンは、このままではジェマが“ボヴァリー夫人と同じ運命を辿るのではないか?”と、頭の中で小説と現実が入り交じった妄想を膨らませていく。

7月11日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国公開


【クロスレビュー】

ヒロイン役ジェマ・アータートンがとにかく魅惑的だ。食欲と性欲は表裏一体。パンを頬張っているときの彼女の官能的な表情や仕草や声で、ルキーニ扮するマルタンの性欲が復活するのも納得だ。おまけに彼女がこねるパン生地のもっちり感まで、女性の肌のようにエロティック。アータートンは『アリス・クリードの失踪』では大胆なヌードを披露していたが、本作では全裸とはいかなくとも彼女の美しくて豊かな肉体を、着衣のままでも充分に感じることができて、同性として思わず羨望の眼差しで見つめてしまった(苦笑)。そんなアータートンの存在感がこの作品を支配し、匂い立つような柔らかな性と生が、ノルマンディー地方の美しい風景ともマッチし、ブラックな笑いを含みつつも薫り高い作品に仕上がっている。
(富田優子/★★★☆☆)

ボヴァリー夫人が現代によみがえる!ということでドキドキしながら見入っていたけど、想像していたよりはライトな後味でユーモラスな作品だった。もちろん、ねっとりとした官能シーンもあるし、ヒロインの所作もいちいちエロチックなのだけど、ノルマンディーの田舎の大らかな空気感やパンの芳ばしい香りも画面から伝わってくるようで、濃厚というよりは瑞々しい生の雰囲気を感じた。いつも夫人を覗き見してるパン屋の主人のとぼけた風貌や旺盛な妄想が可笑しくて、どことなくウディ・アレンの映画を思わせる。
(鈴木こより/★★★☆☆)

パンをこねる作業が、こんなにも官能的だとは。ジェマ・アータートン恐るべし。一方彼女の横で、パン作りの蘊蓄をたれるファブリス・ルキーニは、単なるイヤラシイおじさんにしか見えないのが可笑しい。彼女が魅惑的であればあるほど、男たちと言えば?なのである。これは見方によっては、彼女を中心にした、“情けないおじさん”コレクションとも言える作品。何かに取り憑かれたかのようになる男を演じれば、今や人間国宝級であるファブリス・ルキーニは、小説と現実の出来事が重なり、きっと同じことが起きると心配もしくは期待して、ワイドショー的な興味で覗き見までしてしまう男。彼女の夫は、客観的で英国人らしい冷静さは良いのだが、物事をはっきり言わず、妻の言動を試すような男。彼女の元カレは、場当たり的で調子が良く、何の深い考えもないような男。アンヌ・フォンテーヌ監督なかなか男の見方が手厳しい。でも、ちょっと三谷幸喜風なところが楽しい。
(藤澤貞彦/★★★★☆)


監督:アンヌ・フォンテーヌ 『ドライ・クリーニング』『ココ・アヴァン・シャネル』 原作:ポージー・シモンズ
脚本:パスカル・ボニゼール、アンヌ・フォンテーヌ
出演:ファブリス・ルキーニ 『屋根裏部屋のマリアたち』『危険なプロット』、ジェマ・アータートン 『アンコール!!』、ジェイソン・フレミング 『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、ニール・シュナイダー 『マイ・マザー』
製作:2014年/フランス映画/99分
原題:Gemma Bovery
配給:コムストック・グループ
配給協力:クロックワークス
公式サイト:http://www.boverytopanya.com/
© 2014 – Albertine Productions – Ciné-@ – Gaumont – Cinéfrance 1888 – France 2 Cinéma – British Film Institute


【フランス映画祭2015】
日程:6月26日(金)〜 29日(月)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:エマニュエル・ドゥヴォス
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2015/
Twitter:@UnifranceTokyo
Facebook::https://www.facebook.com/unifrance.tokyo
主催:ユニフランス・フィルムズ

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