サンドラの週末

映画と。ライターによるクロスレビューです。

サンドラの週末【作品解説】
2度のパルムドール大賞(最高賞)含む、カンヌ国際映画祭史上初の5作品連続主要賞6賞受賞を誇るジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でアカデミー賞®主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤールを主演に迎え描き出したのは等身大のひとりの女性の物語。マリオン・コティヤールはサンドラの強さと弱さ、繊細さ、心が折れるかどうかの瀬戸際に立つ者の心の機微を渾身の演技で魅せ、本年アカデミー賞®主演女優賞にノミネートされたほか、各国の映画祭が、その演技を絶賛。主演女優賞を多数受賞した。

【ストーリー】
サンドラは体調不良から休職していたが、まもなく復職する予定だった。しかし、ある金曜日、サンドラは突然解雇を言い渡される。しかし、同僚のとりなしで週明けの月曜日に同僚たちによる投票を行い、彼らの過半数がボーナスを諦めてサンドラを選べば仕事を続けられることになる。ともに働く仲間をとるか、ボーナスを取るか、シビアな選択……。
その週末、サンドラは家族に支えられながら、同僚たちを説得して回る――。


【クロスレビュー】

若き日にダンスを申し込んできた男たちを訪ね歩く『舞踏会の手帖』というフランス映画がかつてあったが、それに較べてこちらは自分の職が懸かっているという点で、世知辛いものになっている。苦境に立たされた時、人が見えてくるというのは世の常ではあるが、親しくしていた人が意外に冷たかったり、そうでもない人から思わぬ反応が返ってきたりと、描写が生々しい。しかし、訪ねて行く相手にもそれぞれ事情があり、同僚の復職よりもボーナスが大切というのを、誰が責められようか。作品の冒頭で、主人公が鏡で自分を見る象徴的なシーンがあったが、この訪問を通じて見えてくるのは、まさに自分自身の姿。仕事をすることの意味は、単にお金を得ることだけではなく自分の存在意義を確認することにあるが、彼女の職場=世の中のシステムでは、人種間や男女間、雇用形態にヒエラルキーがあり、それがないがしろにされる。それにNOを突きつけた主人公に、心からの拍手を贈りたい。
(藤澤貞彦/★★★★☆)

観終わった後、考え込んだ。果たして自分がサンドラの同僚だったらどうしただろうか・・・と。「彼女(弱者)に味方できる人間でいよう」と思うのはたやすい。 しかし現実問題として、生活のことがどうしても頭をよぎる。サンドラに恨みはなく、むしろ好意を抱いているとしても、彼女に投票すると言い切れるのか。何とも悩ましい問いかけを残して映画は終わるが、これまでも苦しい生活を課せられてきた人々を見つめてきたダルデンヌ兄弟は、弱肉強食化した世界に疑問を呈しているのだろう。サンドラに投票した人の善意に心震えるが、だからといって彼女に投票しなかった人が悪人ではないのだ。だからこそのモヤモヤ感に翻弄され、そして答えはまだ出ない。そんな自分の弱さに軽く自己嫌悪・・・。観た者の心をじわじわとえぐってくる。
(富田優子/★★★★☆)


監督・脚本・制作:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジォーネ
製作:2014年/ベルギー=フランス=イタリア/95分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/sandra/index.html
© Les Films du Fleuve – Archipel 35 – Bim Distribuzione – Eyeworks – RTBF(Télévisions, belge) – France 2 Cinéma
※5月23日 Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー !

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