イタリアは呼んでいる

映画と。ライターによるクロスレビューです

「イタリアは呼んでいる」main【作品解説】
グルメ取材でイタリアを訪れた英国人中年男性2人のロードムービーをマイケル・ウィンターボトム監督がユーモアたっぷりに描く。人生の曲がり角に差しかかっているスティーヴとロブは、イタリアの美食レストランや景勝地を取材する仕事を依頼され、ミニクーパーに乗り込みイタリアを北から南へ縦断する5泊6日の旅に出る。2人は極上の料理や美しい景色を堪能し、旅先の恋心も楽しむが…。『あなたを抱きしめる日まで』のスティーヴ・クーガンと、英国を代表するコメディアンのロブ・ブライドンが本人と同じ役名で主演を務めた。2人が道中で繰り広げるモノマネ合戦や絶妙な掛け合いは爆笑ものだ。


【クロスレビュー】

2011年の東京国際映画祭でのインタビューで、その誠実な人柄に触れて以来、動向がとても気になるウィンターボトム監督の最新作は、ドキュメンタリー畑出身の彼らしい作品と言えるのではないだろうか。ベルリンを制した『イン・ディス・ワールド』(02)や『いとしきエブリディ』(12)などは虚構と現実をきっちり線引きするような類の作品ではないことを思うと、本作もその系譜に連なるものと言えよう。英国人俳優ふたりが実名・役柄そのままで登場し、「ケネス・ブラナーと友達」「マイケル・マンの作品に出られる」などと喜々として語る様子は、本当なのか本作の設定だけのことなのか、判然としない浮遊感が楽しい。また、お料理もイタリアの観光名所も美しく丁寧に収められているのも、監督の手腕によるところが大きいだろう。シリーズ化を期待したい。
(富田優子/★★★☆☆)

映画好きな中年男の自分にとってはこんなに楽しさが伝わってくる映画ってそうないなと思うのだが、もしこれを映画があまり好きではなく劇中で語られる俳優の名前や物まねが分からない人、しかも中年男ではなく妙齢の女性が観たとしたら、果たしてこの映画のノリについていけるのか?とちょっと不安に思った。バカ話しに、身内受けの笑いに、延々と続く物まねに、年老いた事や仕事への愚痴・・・。「男っていつまでたっても子供ね」という昔から聞いてきた女性たちの言葉が鮮やかに思い出されてしまう(笑)。が、しかしである。結局のところ、男の幸せなんて仲間とはしゃぐ事、おいしいものを食べる事、素敵な女性と付き合う事の3つに尽きるのであり、これ以上の幸せなんて一生懸命探したって、そうはないのだ。その事実を恥ずかしげもなく全身で表現してしまう主役の2人、最高である。そして、そんな男たちの舞台にイタリアほどふさわしい場所はないだろう。親友と2人の旅行、同じ国なのに地域によって異なる特色を見せる風景と料理、各地で現れる魅力的で優しい女性たち。これ以上に贅沢なものはない。
(石川達郎/★★★★☆)

イタリアといえば「食べて、歌って、恋して」の国。この英国人男性ふたり旅もまさにそうで、絶景のロケーションを巡り、その土地で味わえる最高の料理を堪能する。グルメ取材で訪れている彼らだが、完全にリラックスモードでアドリブも絶好調。二人が活躍するエンタメ界について、モノマネを交えながら本音で喋りまくる。実はこれが見どころで、彼らと同じイギリス人にとっては最高に楽しい映画なのだろう。が、我々日本人にとってはどこまでこのネタについていけるかで感想は割れると思う。個人的には、イタリア人との絡みもほとんど無く、「英国人からみたイタリア」的なコメントや視点もない本作に少々物足りなさを感じてしまった。英国人が「buono(美味しい)」しか言わないなんて…。MINIでの旅なら、いっそMr.ビーンに行って欲しかったかも。
(鈴木こより/★★★☆☆2.5)


監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン、ロージー・フェルナー、クレア・キーラン、マルタ・バリオ、ティモシー・リーチ
2014年/イギリス/108分/ ビスタ
原題:The Trip to Italy
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:http://www.crest-inter.co.jp/Italy/
© Trip Films Ltd 2014
2015年5月1日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

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