セッション

映画と。ライターによるクロスレビューです。

セッション_main【作品解説】 2014年2月のサンダンス映画祭でのグランプリ&観客賞のW受賞を皮切りに、昨年の賞レースで常に熱い注目を集めた本作。第87回アカデミー賞では助演男優賞(J・K・シモンズ)、編集賞、録音賞を受賞。これが長編デビューとなったデイミアン・チャゼル監督は撮影当時28歳!

【物語】 名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。


【クロスレビュー】

中高と吹奏楽部に所属し、特に高校時代は全国大会出場が目標だった自分にとって、あの常軌を逸した師弟関係は分からなくもない・・・というのが正直な感想だ。とは言え当時の先生からの、記憶にある限りの最大の暴言(?)は「地獄へ行け~!」程度。本作に比べりゃあまちゃんで、だから全国に行けなかったのか(違)。フレッチャーの畳みかける罵詈雑言は凡人の心をへし折るには十分だが、あまりのボキャブラリーの豊富さやテンポの良さが圧巻で、笑いすらこみ上げる。どう考えても文科省選定の優良映画にはなり得ないし、彼の鬼指導を肯定する気は全くないが、その一方でその狂気に打ち勝って命を賭けて何かを成し遂げることができるのか?と問うているのだろう。“Good job”程度に生きている自分にとって、超強烈なカンフル剤となった作品だ。
(富田優子/★★★★★)

体が震える。万人受けする映画ではない。しかし、音楽でもスポーツでも仕事でも、ある域(ゾーン)に達しようする人には必ず響くだろう。一言でいえば悪魔に魅入られた人間が逆に食っちゃうような話。その地獄への堕ち方がまた素晴らしい。ラスト10分の攻防で見せつけられるのは、ホントに痺れるような仕事(経験)を誰かと共に成し遂げようとするなら、いい人であるとか人間性とかはどーでもいい、ということだ。言ってはいけない言葉は“Good Job”。これは生涯忘れられない映画になる。
(外山香織/★★★★★)

夫婦や恋人同士の事は他人がとやかく言う事ではなく、当人同士にしか分からないとは常々思う事だが、師弟関係も1対1の関係であるから同じ事なのだろう。師匠のフレッチャーは、自分への愛を確かめるために付き合ってる相手に無理難題をふっかけ、それを相手がかなえる事で愛情の深さを確かめる悪女の様なやり方で弟子に接する。そして、弟子のニーマンは、師匠がクソ野郎なのを分かっていても、まるでやしきたかじんの歌の様にあんたやなきゃアカンうちはドラマーでいられんとでも言い出しそうなほど にくらいつき、ドラムの腕を上げる。他人から見ればそこまでやらないでもと思うし、どう見ても歪んだ関係に思えるのだが、最高の音楽というただひとつの目標のために愛憎を繰り返す師弟の関係は、血と汗の飛び散る真剣勝負でありながらも互いに高度なゲームを楽しんでいるかの様で、単純に言い表せない人間関係の面白さを見せてもらった。癒しや安定を求めるばかりの現代に一発お見舞いしてやるぞ!とでも言わんばかりの激しい映画だ。
(石川達郎/★★★★★)


監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ
製作:2014年/アメリカ/107分
配給:ギャガ
公式サイト:http://session.gaga.ne.jp
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4月17日(金) TOHOシネマズ 新宿(オープニング作品) 他 全国順次ロードショー

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  1. 映画感想 * FRAGILE

    セッション/お前を認めるわけにはいかない、あんたに認めて欲しくはない

    セッションWhiplash/監督:デイミアン・チャゼル/2014年/アメリカ そこにあるのは「関係」でなく、場を支配するものが「何」なのか、だけ。 TOHOシネマズ六本木 スクリーン2 F-13で鑑賞。 事前情報としては、ドラムでスゴイ。ってことと、町山智浩さんと菊地成孔さんがなんかモメてる? みたいなことしか知りません。あと、アカデミー賞の、なにかをとった。なにかを。 そして、いつ見ようと思っても、チケット取ろうとするといつも満席で困った。 あらすじ:ドラムでスパルタです。 19歳のジャズドラマー…

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