ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判

映画と。ライターによるクロスレビューです。

ソロモンの偽証 前篇_main【作品解説】
直木賞ほか多数の文学賞を受賞する人気作家・宮部みゆきが「小説新潮」で9年間にわたり連載したミステリー巨編「ソロモンの偽証」を、『八日目の蟬』の成島出監督が完全映画化。物語の中心となる中学生キャストは、約1万人が応募したオーディションにより選出。ヒロイン藤野涼子役の新人女優・藤野涼子は、本作での役名をそのまま芸名として、鮮烈な女優デビューを飾った。

【物語】
1990年12月25日の朝、中学校の屋上から転落死した男子生徒の遺体が発見される。警察は自殺と判断したが、様々な疑惑や噂が飛び交い、やがて殺人の目撃者を名乗る告発状が学校に届く。告発された容疑者はイジメを繰り返す問題児のクラスメート。混乱する学校と親、過熱するマスコミ報道、そして新たな犠牲者がひとり、また一人。大人たちに任せてはおけない。隠された真実を暴くため、前代未聞の学校内裁判が開廷される―。


【クロスレビュー】

2部作合わせて約4時間半の大作だが、前篇・後篇とも緩むことなく描き切った。凄惨なイジメや暴力シーンはリアルで正視できないところもあったが、前篇で描かれるべき出来事をあえて見せず、後篇のここぞの場面で回収してきた成島監督の手腕が光る。だが本作は、クラスメートの死の真相究明が主題ではなく(それだけでもミステリーとして見応え十分だが)、自らの欺瞞や罪に対して、自分なりに決着をつけることにこそ意義がある。「口先だけの偽善者」という言葉にヒロインは傷つくが、その言葉に心を刺される観客も多いのではないだろうか。“ああはなりたくない大人”も多数登場するが、彼らは大概自分を偽っているか、保身に走るだけだ。自分もそれと大差ないのではないか。本作は中学生だけではなく、大人にも自分自身と向き合う覚悟を突きつけている。
(富田優子/★★★★★)

※下記レビューは物語の結末に触れている点があります。
一人の中学生の死に端を発して周囲の人間の抱えるダークな部分が少しずつ明らかになっていく展開。キイワードは「偽善」。「大人になれ」という言葉は便利だが、体裁を繕いながら真実をうやむやにして生きていくのが大人なのであれば、それは違うと中学生が疑問を呈する。宮部みゆきの著作は「普通の人が陥ってしまう悪」が特徴的に書かれていると思っているが、後篇の裁判にもそれが見られる。罪を追求するはずの人間が自らの罪を告白し、弁護するはずの人間が罪を追求する。立場の逆転を随所に見せながら、この場所に他人のことを裁ける人間は誰もいないと断定し、中学生に「自らの罪は自分で背負って生きていく」と言わしめる。中学生役の役者陣の眼差しが、本作をファンタジーではなくリアルなものとして映すことに成功しているだろう。ただし、死んだ少年の心情が置いてけぼりにされた感は否めない。裁判後の風景に違和感を覚えたのは、自分だけだろうか。
(外山香織/★★★★☆)


ソロモンの偽証 後篇_main監督:成島出
出演:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、西村成忠、西畑澪花、若林時英、加藤幹夫、石川新太、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、小日向文世、黒木華、尾野真千子
原作:宮部みゆき(新潮文庫刊)
配給:松竹
(C)2015 「ソロモンの偽証」製作委員会
公式HP:www.solomon-movie.jp
『ソロモンの偽証 前篇・事件』『ソロモンの偽証 後篇・裁判』大ヒット上映中

トラックバック 2件

  1. Akira's VOICE

    ソロモンの偽証 後篇・裁判

    中学生の中学生による自分と大人達のための裁判。  

  2. soramove

    映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」あり得ないのに感じるリアル

    映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」★★★★面白かった 藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、 清水尋也、富田望生、前田航基、 佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、 黒木華、田畑智子、松重豊、小日向文出演 成島出 監督、 121分、2015年3月7日公開 2015,日本,松竹 (原題/原作:ソロモンの偽証/宮部みゆき原作)

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