イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

映画と。ライターによるクロスレビューです。

メイン第87回アカデミー賞脚色賞受賞

【作品解説】
第二次世界大戦時、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号<エニグマ>。世界の運命は、解読不可能と言われた暗号解読に挑んだ、一人の天才数学者アラン・チューリングに託された。 英国政府が50年間隠し続けた、一人の天才の真実の物語。時代に翻弄された男の秘密と数奇な人生とは――?!


【クロスレビュー】

第2次世界大戦で英国(というより連合国と言うべきか)は勝利したが、アラン・チューリングも果たして勝者だったのか?彼は結果的に戦争の終結に貢献したが、その後の彼の人生を見るとやるせなさが募る。そもそもエニグマ解読のために軍によって集められたチューリング含む精鋭は民間人であって、民間人を戦争に巻き込んで良いのかと疑問を持たざるを得ない。本作は、いかに暗号を解明するかというサスペンス的な見せ場をつくりつつも、戦争に翻弄され、運命を狂わされた人間を描くことで反戦映画としての側面もあると言えるだろう。天才兼変人を演じさせれば右に出る者はいない(?)カンバーバッチのどアップは何度も拝めるのでファンの人は悶絶だろうが、個人的には主人公の数少ない理解者キーラ・ナイトレイの好演が心に残った。
(富田優子/★★★☆☆)

暗号とは本来の情報をカモフラージュして伝える方法であるわけですが、本作は、その解読という過程を通して、人間及び社会における「本音と建前」と言うところに焦点を当てている気がします(ゆえにタイトルにも納得)。それが功を奏する場合もあれば、コミュニケーション不全に陥ってしまうこともある。解読しない方がいい暗号もあるかもしれない。一方で、言葉を介さなくても、察したり通じ合ったりすることができるという不思議さ。そして本作の山場はエニグマの解読に成功してからなのですよね……。戦時下の研究者たちに負荷されたもの。チューリングの晩年があまりに悲しくやるせない思いが満ちましたが、秘されたままにされなくて本当に良かった。このような映画が作られたことに一筋の光を感じました。
(外山香織/★★★★★)

いつの時代も「常識破り」の人が世界や歴史を変えてきたが、アラン・チューリングも常識にとらわれない発想で思考し、それを貫いた孤高の人物だ。コンピューターの礎を築いただけでなく、当時珍しかった能力主義や女性の登用なども取り入れていく。しかし「機械は思考するのか」という問いに対する彼の答えは、意外にもセンチメンタルなものだった。まさかエニグマへの挑戦に少年時代の夢を重ねていたとは…。後半、驚きの真実が明かされていく。人知れず苦悩するチューリングの心の内をカンバーバッチが丁寧に表現。その演技は心に訴えるものがあり、個人的には彼にもオスカーをあげたかった。
(鈴木こより/★★★★☆)


▼作品情報▼
原題:The Imitation Game
監督:モルテン・ティルドゥム
脚本:グレアム・ムーア
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング
原作:アンドリュー・ホッジス「Alan Turing : The Enigma」
公式サイト: http://imitationgame.gaga.ne.jp/
配給:ギャガ
(C) 2014 BBP IMITATION, LLC
2014/英・米/115分
3月13日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー

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