博士と彼女のセオリー

映画と。ライターによるクロスレビューです。

Theory of Everything_main【作品情報】
余命2年の宣告からも希望を持ち難病と闘い続けた天才と彼を支え続けた女性の感動ヒューマン・ラブストーリー

学生の頃から天才物理学者として将来を嘱望されていたスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)。彼がケンブリッジ大学の大学院に在籍している時、詩を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い、たちまち2人は恋におちる。しかし、直後にスティーヴンは難病ALS(筋委縮性側索硬化症)を発症し、余命2年の宣告を受ける。それでも彼と共に生きると決めたジェーンは、力を合わせて病気と闘う道を選択する。
出会いから、恋愛、結婚、出産・・・。自分たちに与えられた時間がどれほど貴重なものかを知る2人は、歳月を重ねるごとに増す試練に強固な愛の力で立ち向かっていくが、時には壁に突き当たり、限界を感じ、自身の無力さに打ちひしがれる。刻々と悪化するALSとの闘病生活の中、持ち前のユーモアで乗り越えていく姿を、ホーキング博士の輝かしい功績とともに彼らの苦悩と純愛を感動的に描く。


【クロスレビュー】

現代宇宙論に多大な影響を与えたホーキング博士だが、いかに彼が世界的権威の存在になるのかという点を知りたいと思うのならば、本作は期待外れになるだろう。本作はあくまでも彼と妻ジェーンの物語。非リケジョである自分からすれば、学術的な事柄はちんぷんかんぷんなので、そこにフォーカスされた物語だったら理解は苦しかったであろう。しかしラブストーリーが主軸であることで偉大な物理学者というより“人間スティーヴン”の生き方に共感したり、疑問を感じたり・・・と寄り添いやすくなっている。それにしてもどんな天才でも、男女の愛や業(特に下半身系)に関することは制御不能で解明できないことに、人間とは宇宙よりも深い謎を抱えているのだと思わずにはいられない。ジェーンのセリフがある時点で過去形になったことに胸を締め付けられるが、それを受け入れる女性の覚悟を演じた英国期待の若手女優フェリシティ・ジョーンズが素晴らしい。
(富田優子/★★★★☆)

題名にセオリーとなってはいるが、ホーキング博士と妻ジェーンの愛の物語は著しく世間一般が考えるセオリーから外れているといえるだろう。だけど、だからこそ二人にしか紡ぐ事の出来なかった、他の誰とも違う深い愛がそこにはある。物理学者であり宇宙の理論の世界的権威であるホーキング博士を持ってしても、愛を全ての物事に共通に当てはまるセオリーで証明する事は出来ない。愛のセオリーとは、愛し合う2人同士のみに適応する普遍性のないセオリーであって、そこを世間一般が考える常識やセオリーと違うからと他人がどうこう言っても意味はないと思う。愛し合う2人が悩んだり苦しんだり失敗したりを繰り返しながら、生涯をかけて証明しようとするもの、それが愛のセオリーなのだろう。その『博士と彼女のセオリー』の証明の物語をぜひご覧いただきたい。
(石川達郎/★★★★☆)

著書は世界的ベストセラーで、現代宇宙論に多大な影響を与えたホーキング博士。しかし、もし彼が運命の女性ジェーンに出会っていなければ、その功績、いや、存命すら叶わなかったかもしれない。
物語はそんな二人の出会いから、ともに生きた壮絶な日々を描き出す。ALSという難病がもたらすブラックホールのような絶望感から、幾度となく博士を立ち上がらせるジェーン。しかし生涯をかけて「時空」の真理を探究しつづけた博士とその妻にも、時の流れは訪れ、逆らう術もない。
終盤に、無神論者の博士が一度だけ神の存在を認めるような発言をするのだが、あれは妻への優しさだったのか、それとも心変わりへの言い訳だったのか。男女の解釈の違いが感じられて興味深かった。
(鈴木こより/★★★★☆)

映画はホーキング博士の理論を踏まえ「回転」「渦巻き」のモチーフを随所にちりばめ、ラストにはスティーヴンとジェーンの道のりを美しく逆回転して見せる。ALSという難病を背負った夫と妻には耐え難い苦痛も葛藤もあっただろうが、あえて病を主軸とするのではなく、ラブストーリーとして仕上げられている。とは言え、余命2年と言われた彼が今も生きている現実を思うと、スティーヴンの人生の大きな局面に舵を取ってきたのやはりジェーンだ。どんな代償を払ってでも彼を生かそうとした選択は、彼女じゃなければできなかったはずである。互いにそれが分かっていても、他の人と道を歩もうと決めた彼ら。思い出は巻き戻せても、人の心までは巻戻せない。「どんなに不運な人生であっても、生きてさえいれば希望がある」。スティーヴンの言葉が胸に迫る。
(外山香織/★★★☆☆)


監督:ジェームズ・マーシュ
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、デヴィッド・シューリス
原題:The Theory of Everything
原作:ジェーン・ホーキング著『Travelling to Infinity: My Life with Stephen』
配給:東宝東和 124分
公式サイト:http://hakase.link
(c)UNIVERSAL PICTURES
※第87回アカデミー賞5部門ノミネート:作品賞、主演男優賞(エディ・レッドメイン)、主演女優賞(フェリシティ・ジョーンズ)、脚色賞(アンソニー・マクカーテン)、作曲賞(ヨハン・ヨハンソン)
3月13日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー

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  1. 映画感想 * FRAGILE

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    博士と彼女のセオリーThe Theory of Everything/監督:ジェームズ・マーシュ/2014年/イギリス 見終わってからしばらくして、ふっ、と、怖いことを思いました。 TOHOシネマズシャンテ スクリーン1、E-9で鑑賞。エンドロールが流れるまで、デヴィッド・シューリスをアラン・リックマンだと思い込んでいました。ごめんなさい……! あらすじ:天才が病気になって大変です。 物理学を学んでいたスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は言語学を学んでいたジェーン・ワイルド(フェリシテ…

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