【TNLF】バレエ・ボーイズ

バレエ少年のボクたちが、バレエ青年になるまで

バレエ『6才のボクが、大人になるまで。』が各紙のベスト10を賑わしている。12年間にわたる撮影。それによって、6才から18才までの子供の成長が記録されていることが、凄いと思った。本作は、3人のバレエスクールに通う男子の、13才から16才までの4年あまりを追ったドキュメンタリー。それなのに、彼らの成長ぶりには『6才のボクが、大人になるまで。』に負けないくらいの驚きがある。わずか75分という時間。逆にそれだからこそ、そのスピードに驚かされてしまうのだろうか。いや、子供の成長を見守る親の気持ちは、案外この映画のように、“あっという間”なのかもしれない。

最初は女の子とどっこいどっこいの背丈で、リフトをするにも、どこか頼りなかったルーカス少年は、15才の頃には、180センチを超えてしまう。可愛らしい声もいつの間にか変わっており、一瞬戸惑うほどだ。成長は何も外見だけではない。何より内面が変わっていくのが、顔でわかる。この作品は、こういうものにありがちな、汗や涙などには一切関心が無く、ただ彼らの成長のみに焦点を当てている。それ故にレッスン風景も、バレエ発表会も学校の受験も、あくまで同じ日常という枠の中で捉えられているのだ。

 ノルウェーでは、いわゆるバレエ男子は、まだまだ少数派のようだ。クラスには3人しか男の子がいない。昼間は普通に学校に通い、夜は9時までレッスンという生活は、学校で遊び仲間を作ることを困難にし、3人の結びつきは当然ながら強くなっていく。ロッカー室ではしゃぐ彼らの姿は、クラブ活動で盛り上がるその辺の中学生と何ら変わるところがなく、それ故にとても身近な存在に思えてくる。進路指導の先生からの助言。もしバレエの世界で生きていけなくても、他でちゃんといい暮らしができるように、勉強もしてくれという、当然といえば当然の親の気持ち。まだ、15才の少年である。迷いや悩みが生まれてくる。実は、自分たち大人たちが今日の姿になっているも、多かれ少なかれ、実は10代の迷いや決断にあったということを、今更ながら気づかされる。自分自身は、ただ漫然と学生生活を送っていたという意識しかなかったにしても、である。

ただ、バレエダンサーになりたいという、特別な夢を持つ彼らは、その夢故に同年代の子よりも、将来への不安が多いことは確かである。この先もずっと続けていけるのか…。好きといっても、そこは実力の世界である。13才では大した差はないが、14才になり、15才になり、16才になり、身体も大きく変わり、自意識が強くなってくるに従い、自分の身の丈というものが見えてくる。その厳しさは、やっぱり普通の中学生とは、較べものにはならない。

あれほど仲の良かった3人だが、そのバランスも進学により変わっていく。名門ロンドン・ロイヤル・バレエスクールから招待を受けた少年と、地元のオスロ国立芸術アカデミーに行った少年とでは、顔つきがやっぱり違ってくる。3人はこれからも親友でいるだろうが、もう以前と同じようにはいられないだろうという予感が、既に画面から滲んできてしまうのが、残酷ではある。それでも三人三様、それぞれ確実に成長していくさまが顔に滲み出ているからだろう。それが嬉しく、大変爽やかな作品になっている。



▼作品情報▼
原題:Ballettguttene/英題:Ballet Boys
監督:ケネス・エルヴェバック(Kenneth Elvebakk)
2014年/ノルウェー/ノルウェー語/75min
提供:アップリンク


イベント、スケジュール等の詳細については公式サイトをご覧ください。

「北欧映画の一週間」
トーキョーノーザンライツフェスティバル 2015
会期: 2015年1月31日(土)~2月13日(金) ※音楽イベントは別途開催
会場: ユーロスペース、アップリンク 他
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:
 http://www.tnlf.jp/index.html

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(c)Chisato Tanaka

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