【FILMeX_2010】フィルメックス授賞式をレポート!

審査員と受賞監督・出演者のみなさん

第11回東京フィルメックスの最終日(11/28)、有楽町朝日ホールにて授賞式が行われた。グランプリは内田伸輝監督の『ふゆの獣』、審査員特別賞はハオ・ジェ監督の『独身男』、観客賞は想田和弘監督の『Peace』が受賞した。審査員から受賞理由が発表された後、監督や俳優が喜びを語った。

司会はもちろん、J-WAVE ナビゲーターのサッシャさん。今年のフィルメックスもサッシャさんの声で無事に閉幕しました。

サッシャさん

■観客賞/『Peace』
コンペティションと特別招待作品が対象となり、上映後の観客投票によって選ばれた。監督にとって最も名誉な賞ともいわれている。本作は、想田和弘監督による「観察映画」第3弾。公開への期待が高まります。
作品紹介は(「Peace」にあなたは何を見る?観察映画、観客賞受賞!)をご覧ください。

想田和弘監督

現在はNY在住の想田監督だが、本作は義父母が暮らす岡山県で撮影された。授賞式で監督は、「作風が作風だけに、“観客賞”には縁がないと思っていたので驚いています。(出演した)猫のおかげですね。穴子が好物なので、岡山に帰った時は上等な穴子をプレセントしようと思います。本当に有難うございました!」とコメントし、笑顔で手を振って拍手に応えた。

■審査員特別賞/『独身男』
ハオ・ジェ監督デビュー作。中国の農村に存在する、人間の性欲と社会問題を中立的な視点で描かれていることが評価された。

たしかに、下ネタのなかにも風刺があり、彼らの純粋な欲望とストレートな感情表現が、成熟した人間関係のうえでこそ成立していることに感動を覚えました。社会不安を笑い飛ばす作風にも好感度大。監督はご両親と一緒に、この脚本を作り上げたという。世界にはそんなオープンな家族が存在するのですね。そのような家庭から生まれた作品には、やはり独特の大らかさが感じられます。

ハオ・ジェ監督(真ん中)

ハオ・ジェ監督は、「10本のコンペティション作品は、僕のよりずっと良い作品ばかりでした。このような励ましの賞を頂いたことは、僕のような新人監督にとって次の作品を撮る力になります。また、僕らのようなスタイルで映画を作っている人々にも意義のあることだと思います」と、言葉を選びながらゆっくりと語った。また、今は亡き父への「父ちゃん、やったよ。もう心配かげねがら」(イメージを伝えるため山形弁で)という方言でのメッセージに、通訳の女性が涙で声を詰まらせるという場面も。女優のイェランさん(写真左)とプロデューサー(写真左から2番目)も登場し、ステージに華を添えた。

余談ですが、本作プロデューサーのケビン・クーさん、期間中も「一歩前へ」という姿勢と圧倒的な存在感で目立っていました(笑)。この作品にこのプロデューサーあり。次回作の『独身女』にも期待が高まります。

■最優秀作品賞/『ふゆの獣』
前2作がぴあフィルム・フェスティバルで連続受賞した内田伸輝監督の長編第3作。受賞理由は、「映画的手法を用いて、心理ドラマを類いまれなる強烈なレベルへと発展させている。特にカメラの使い方が際立っており、俳優たちの演技も同様に素晴らしい」と評され、限られた予算(110万円)のなかで大きな表現力を極めていることも高く評価された。

内田伸輝監督(右)と主演女優の加藤めぐみさん(右から2番目)ほか出演者の方たち

緊張した面持ちの内田監督からは、映画祭を楽しんでいるという様子も窺えた。「誰がこの結果を予想したでしょうか…他のコンペ作品はとても勉強になりましたし、凄いなと思っていたので、自分の作品が選ばれるなんてまったく予想してなかったです。まったく予想していなかったので、映画祭の最終日を思い切り楽しもうと思い、フィルメックスTシャツ(白黒の横縞)を着てきちゃいました(笑)。この映画は完全な自主映画です。自己資金で作りました。配給のことも考えず、自分たちのやりたいことをやろうと思って作りました。これから宣伝して上映できれば、と思っています。出演者とスタッフに感謝します。出演者の方々の演技はレベルが高いので、これから活躍してほしいです。ありがとうございました」とコメントした。

東京フィルメックス プログラム・ディレクターの市山尚三氏も「4人の若者たちの激烈な感情のぶつかり合いが観る者を圧倒する力作」(チラシ転載)と称えている本作品、劇場で観れる日を心待ちにしたい。

(取材後記)映画祭で映画を観ることは、宝探しに似ている。どんな作品に出会えるのだろう、という楽しみがある。当サイトからもライター8人全員で参加したが、好みの作品に出会えたもの、残念ながらそうでなかったもの、とさまざまであった。来年もまた、あるいは来年こそは、とそれぞれの想いを秘めながら、東京フィルメックス取材を終了した。

取材:鈴木こより

※筆者都合により『独身男』しか観賞できなかったため、記事に偏りがあることをお許しください。完全なレポートは以下の公式サイトをご確認ください。ちなみに当サイトライター<いの>が記事を担当しています。
▼東京フィルメックス公式サイト(デイリーニュース/閉会式)
http://filmex.net/dailynews2010/2010/11/post-9.html

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