【TIFF】『ハングリー・ハーツ』アルバ・ロルヴァケル&サヴェリオ・コスタンツォ監督インタビュー

ヴェネツィア映画祭で主演女優&男優をW受賞した注目作

hungryhearts_main イタリアの実力派女優アルバ・ロルヴァケル(『眠れる美女』)と米俳優アダム・ドライバー(『フランシス・ハ』)が夫婦を演じ、ヴェネツィア映画祭で主演女優&男優をW受賞した注目作が、TIFF2014(ワールド・フォーカス)で上映された。

監督のサヴェリオ・コスタンツォと主演のアルバのタッグは「素数たちの孤独」(TIFF2010で上映)以来、今作で2度目。今回も2人揃って来日し、衝撃のラストの余韻が残る会場に姿を見せた。
上映&QAから一夜明けた翌日、急遽、幸運にもコスタンツォ監督とアルバにお話を伺うことができたため、以下、二人のインタビューとQAで語られた撮影エピソードをお届けする。


——前作の「素数たちの孤独」に続いて今作も小説をもとに映画化されていますが、原題の「Il bambino indaco(インディゴ・チャイルド)」という言葉を、私は今回初めて知りました。どうしてこの小説を映画化しようと思ったのでしょうか?
hungryhearts_4監督:「インディゴ・チャイルドというのはあくまできっかけで、それがどうなるのかというのはご覧になってからのお楽しみなんですが、それをテーマにしたかったわけではなく、若いカップルが子供を持つこと、恋愛について描きたいと思っていました」

——今作で再びアルバさんを主演に起用した経緯について教えてください。
監督:「今回の脚本はアルバが妻役を演じることを想定して書きました。このキャラクターはアルバとともに作り、生まれました。アルバはとても優れた女優だし、強い部分と繊細な部分、両面を持っているところが魅力で、起用したいと思いました」

——今作の演技でヴェネツィア女優賞を受賞されていますが、母国語(イタリア語)以外の言葉での演技は簡単ではなかったと思います。いかがでしたか?
AlbaRohrwacher4アルバ:「難しいということはなく、むしろ私としては好きなシチュエーションでした。過去にもドイツ語やアルバニア語で演じていますが、母国語ではない言葉で演じることは、自分自身から遠ざけて、その人物に入り込むことを容易にしてくれるんです。
私にとってこの映画での挑戦は、ネガティブな、と言っていいのか分かりませんが、ひとりの女性が妄執の中に落ち込んで出られなくなるということを、善悪を超えたところで演じていくということでした。ブラックホールの中に落ちて身動きできなくなっていくのですが、それを見ている人も彼女から離れられなくなっていく。でも、そういった演技が成功しているかどうかは、観る人によるのだと思います」

——そのような複雑で難しい役を演じている時、アルバさん自身はどのような状態になるのでしょうか?
アルバ:「撮影中はやはりカメラが回っていない時でも、人物のキャラクターを引きずってしまうものですね」

——夫役を演じたアダム・ドライバーは「スター・ウォーズ エピソード7(原題)」の出演も決まり、注目が高まっている俳優ですが、一緒にお仕事をされた印象を教えてください
監督:「アダムはとても寛容な人です。とても真面目だし、彼と仕事をするのは素晴らしく、深いものが得られました。自分たちと近い感覚を持っていて共感も抱けたので、いい仕事ができたと思っています」

アルバ:「サヴェリオ(監督)が言うように、すごくいい仕事ができたと思うし、彼は信じられないぐらい一緒に仕事がしやすかったです。同じような見方を共有できる人と仕事ができるというのは素晴らしいです」

——そういう息の合った2人の演技が、ヴェネツィアでのW受賞につながったのではないでしょうか?
アルバ:「この映画は恋愛についての映画ですし、2人の関係が映画のベースにあるわけですから、W受賞できたということは、ある意味、何かの真実に到達したということを思わせてくれるので嬉しかったです」

——以下、QAで語られた撮影エピソードや演出について触れています↓

AlbaRohrwacher3原作小説の舞台はフィレンツェだが、映画ではニューヨークに場所を変えて撮影されている。その理由について、監督は「主人公の女性をもっと遠くの、暴力的で臭くて、アグレッシブな大都市に置く必要があった」と説明した。またNYには以前住んでおり、フィレンツェよりもよく知っていることから、脚本を書くうえでも都合が良かったという。スタッフの大半はアメリカ人で、夫役のアダムもイタリア語が話せないことから、撮影現場では主に英語が使われていたそうだ。

冒頭の爆笑シーンからは想像もつかないような衝撃の結末を迎えることについては、「(原作にはなかったが)脚本を書き始めたときのムードもあって、最初のシーンは少し可笑しなものにしたいと思い、自分でも大笑いしながら書いた(笑)」と監督。完璧を求めるあまり、そのシーンの撮影は19回も撮り直したそうで、アルバは「悪夢でした」と苦笑いしながら振り返り、観客の笑いを誘っていた。
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——取材後記
アルバの柔らかいコメント(ツッコミ?)がどこかユーモラスで、会場は何度か笑いに包まれた。監督も「なぜアルバが話した時だけ、みんな笑うんだ?」と言っていたほどで、彼女がもつ独特な雰囲気にすっかり魅了されてしまった。そんなアルバに「女優以外に何かやってみたいことはありますか?」と聞いてみたら、「いいえ、この仕事が好きですし、この仕事だけでもかなり大変なので・・・」とのこと。年間に多数の映画に出演している多忙な彼女が来日してくれたことは嬉しい驚きで、ずっと会ってみたいと思っていた人だっただけに今回はかなり幸運だった。来日は3度目というアルバ。「まだ東京にしか来ていないけれど、これからも何度も来たいと思わせる街です」とコメントしてくれたので、また近いうちに再会できることを期待したい。


監督/脚本 : サヴェリオ・コスタンツォ
キャスト:アダム・ドライバー、アルバ・ロルヴァケル、ロベルタ・マックスウェル
109分 英語 Color | 2014年 イタリア |


【第27回東京国際映画祭】
開催期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)の9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座など
公式サイト: http://www.tiff-jp.net

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