【TIFF】来るべき日々(コンペティション)
監督/脚本/: ロマン・グービル 出演:ロマン・グーピル、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、マリナ・ハンズ、ノエミ・ルヴォスキ、ジャッキー・ベロワイエ
【作品解説】
(TIFF公式サイトより)
構えただけで惨事を起こすカメラについての映画はどうだろう?映画監督が、新しい企画を考える一方で自分の老いと向き合い、キャリアも見つめ直していく姿を描く。
2010年の東京国際映画祭で上映された前作『ハンズ・アップ!』が、一部で熱狂的な支持を受けたロマン・グーピル監督の新作。グーピル自身が演じる映画監督が老いを自覚しながら世界を見つめていく様を軸に、実生活とドラマとが自由に交差し、ユニークな世界が展開する。ドラマ部分と、過去に撮影したドキュメンタリーの映像が組み合わさることで、内面の葛藤や子供たちの成長の記録といったミクロな視点と、現代社会に対するスタンスというマクロな視点が並置される。長編フィクションに加えてドキュメンタリーや短編などを数多く手掛けてきたグーピル監督ならではの世界であり、キャリアの集大成的な作品である。映画作りに関する映画という「メタ映画」の側面ももち、今作で映画監督をやめるのではないかと思わせる内容もあるが、監督一流のユーモアに貫かれ、ペシミズムともシニシズムとも微妙に異なる、老年手前世代の微妙な心情が絶妙に描かれた、極めて巧みで稀有な逸品。
【クロスレビュー】
藤澤貞彦:★★★☆☆
60歳を迎えた映画監督が、自ら家族と共に出演。映画の企画を考える過程を追ったフィクションともドキュメンターともつかない不思議な味わいの作品。家族で戦禍の跡も生々しいサラエボを訪れた時のプライベート・フィルムが挿入されたかと思えば、シリアの問題について、中東から始まる第三次世界大戦の可能性が議論されるなど、本作にはこうした問題が、フランスの日常の延長線上にあるという感覚がある。最近の東欧の映画に見られる戦争への危機感(『ハンナ・アーレント』『イーダ』)は、フランスにも現実にあるようで恐ろしく、対して日本は何をしているのだろうかという気にさせられる。
富田優子:★★★★☆
冒頭、いきなり空からピアノが落ちてきたり、銀行の美人支店長からシリア問題を追及されたり、フランスの国内問題やはたまた監督自身の家族の物語になったり・・・と、この作品は一体どっちの方向へ進むのかと混乱しつつ見ていたが、次第にドキュメンタリーとフィクションの間を漂う自由奔放さに引き込まれる。絶えず誰かと議論(口論?)するなど、フランスの議論好きの国民性も見られて興味深い。それにしてもラストに思いがけない大物俳優らのカメオ出演があるなど驚かされる。葬式の場面ではモーツァルトのレクイエムが流れるが、この曲がこんなに愉快に聴ける映画は他にあるまい。グービル監督独自のユーモアには脱帽。
© 2014 LES FILMS DU LOSANGE – FRANCE 3 CINEMA
85分 フランス語 Color | 2014年 フランス |
【第27回東京国際映画祭】
開催期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)の9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座
公式サイト: http://www.tiff-jp.net