【TIFF】破裂するドリアンの河の記憶(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

破裂するドリアンの河の記憶_main【作品解説】(TIFF公式サイトより)
港町に暮らす高校生たち。勉強に熱心でないミンは美しいメイ・アンと森や海沿いを散歩してデートするが、メイ・アンはふと連絡が取れなくなってしまう。一方、地元ではレア・アース採掘工場の建設が計画されている。女教師のリムは、建設反対運動に参加しつつ、生徒に歴史を教えているが…。
高校生の淡い恋愛物語としてスタートしながら、やがて社会や歴史への意識を縦横に織り込んでいく、深みと美しさを備えた青春映画である。複数の人物の視点がリレーのように繋がることで、いくつもの次元の物語が語られる構成が巧みであり、高校生たちの視点を借りて、観客も世の中の多面性に気付かされていく。未来を考えるために歴史とは何かを問う姿勢が映画に広がりを与え、青春期特有の繊細な感情が奥行きをもたらす。リアリズムとロマンチシズムの双方を備えたスケールの大きい作品であり、大型新人監督の登場である。


【クロスレビュー】

試験操業中のレアメタル工場により汚れた川の水、その波紋が街の人々を分断していく。初めに気がつく漁師たちは、為すすべなく街を追いやられる。反対運動をしている人々の間でも、急進的な人がエスカレートしていく中で、運動が分解されていく。そうした中、無関心な人はあくまで何も変わらず、工場は着実に、既成事実を作っていく。どこにでも起こりがちな話を、高校のふたつのクラス、生徒たち、先生を軸に話が進んでいく。生徒同士の恋愛編、女教師と彼女を慕う女子学生の師弟編、終章と3部構成になっているのだが、主役の女子高生が、まさかの理由で突然お話から退場してしまうなど、話の繋ぎ方が、あまりにも唐突過ぎてとまどうばかりである。作者の意図がわからないでもないだけに、惜しまれる一編。
(藤澤貞彦/★★☆☆☆)

作品のテーマが高校生カップルの淡い恋愛に始まり、工場建設に伴う環境破壊、マレーシアやアジア諸国の歴史、テロリズム等と多岐にわたり、複数の登場人物の視点から語られるためインパクトに乏しい。伝えたいことがたくさんあるのは理解できるが、ヨウ監督、少々欲張り過ぎなのでは?それぞれが重いテーマであるのだが、残念ながら深く描ききれていない印象だ。さらに物語の締めくくりがほろ苦い恋の思い出に帰結するので、せっかく「からゆきさん」(本当に久しぶりにこの言葉を聞いた!)など埋もれた歴史や暴力的行動が引き起こす悲劇などを意欲的に取り上げていたのに、それらの重みが薄れ、もったいない。
(富田優子/★★☆☆☆)


監督/脚本/編集 : エドモンド・ヨウ
出演:チュウ・チーイン、シャーン・コー、ダフネ・ロー、ジョーイ・レオン
128分 北京語、マレー語、広東語 Color | 2014年 マレーシア |
©Greenlight Pictures ©Indie Works


【第27回東京国際映画祭】
開催期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)の9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座
公式サイト: http://www.tiff-jp.net

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