【TIFF】1001グラム(コンペティション)
『1001グラム ハカリしれない愛のこと』という邦題で、2015年10月下旬、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!
監督/脚本:ベント・ハーメル
出演:アーネ・ダール・トルプ、ロラン・ストッケル、スタイン・ヴィンゲ、ヒルデグン・リーセ
【作品解説】(TIFF公式サイトより)
内気なヒロインが様々な決断を迫られる中で、心の殻を少しずつ破っていく様子を暖かいタッチで描く人間ドラマ。科学と人間の行動の間にあるものに魅了されていると語るベント・ハーメル監督によれば、『キッチン・ストーリー』(03)にも底流していた人間の行動のおかしみを、さらに発展させようとしたのが本作である。一粒のホコリも許されないような科学的測量の世界を象徴するごとく、画面には北欧デザインのように美しく端正な雰囲気が漂い、そこに緊張した人間の感情をほぐすような、ユーモラスで温かい空気が吹き込まれる。まさに完全なるベント・ハーメルの世界である。監督が初めて女性を主役に据えた本作のヒロインを演じるアーネ・ダール・トルプは、ノルウェーきっての人気実力派女優のひとり。
【あらすじ】
マリエは、測量研究所に勤める女性研究員である。毎日愛車で研究所に通い、計測や測量を行う。規則正しい毎日が続く中、パリで行われる「1キロ」の重量に関する学会が迫ってくる。研究所が保管している国の基準となる大切な1キロの重りを、パリに運ぶことになる。特別な容器に厳重に保管された重りを持って、マリエはパリに向かう。各国から同業者が集まる学会の場で、マリエに新たな出会いが待ち構えていた…。
【クロスレビュー】
北欧っぽいデザインの電気自動車、シンプルでムダのないインテリア。近代的でオシャレな感じもするけど、どこか冷たい印象を与えるのはヒロインの心を写し出しているから。この無彩色のトーンが、物語の進行とともに色を取り戻していく。重量計をめぐるストーリーの中で、量れないもの、目に見えないもの、消えゆくもののかけがえのなさ、大切さが静かに語られる。派手な演出やインパクトはないが、最後の最後、まさかの下ネタオチに驚かされた。
(鈴木こより/★★★☆☆)
測量研究所で働く人々、「重量」の世界基準をテーマにした学会、各国から持ち込まれる1kgの重り。一風変わった舞台設定に、「人生の一番の重荷は、背負うべき荷物がないこと」と言う哲学的な言葉も飛び出し、固い話なのかな?と思いきや最後は意外なオチが待っていました。1gの誤差も許されない環境にいても、リアルは想定外のことばかり起きて誤差だらけ。人は神格化された「世界基準」を求めたくなるけれど、それも結局は人が作り出しているにすぎない。無機質な世界がヒロインとともに変貌していく様が鮮やかだった。
(外山香織/★★★☆☆)
ヒロインは度量衡研究所の職員!『キッチン・ストーリー』といい、本作といいベント・ハーメル監督は、面白い職業をよく見つけ、それをストーリーによく活かす。人生を度量衡で語る。こんな発想はなかなか生まれない。寒々しい室内で、ダブルベッドにひとり寝て、部屋の隅で小さくなって過ごす、もう若くはない女性の満たされない生活。しかしバランスは完璧である。彼女の青い目に、室内の装飾、青い服、青い電気自動車がとてもよく映えている。その完璧さが崩れ、車の色も変わった時に、初めて新しい人生が見えてくるのが面白い。小さな埃さえ許されない、度量衡基準器と違い、人生にはほんのちょっとのアンバランスが必要なのである。度量衡にまつわる名言も多数あるが、タイトル『1001グラム』の意味がわかった時にはホロッとさせられた。
(藤澤貞彦/★★★★★)
後生大事に保管されているキロ原器、それを管理する大仰な機関、世界会議…実在するのだそうです!「大真面目にやっていることのおもしろさ」のオンパレードで、ワクワクが止まらない。マリエ(アナ・ダール・トルプ)は、すんなりとした容姿、言葉少なに自分の人生や孤独と向き合う姿が好ましいけれど、とても 内気で、感情の起伏をを隠す硬質なヒロイン 。でも、その彼女も終盤になって、ようやく笑顔を見せてくれる。タイトルの「1001グラム」の場面には、父親が、新しい世界に向けて娘の背中を押そうとする大きな愛情が溢れているような気がして、胸を打たれた。
(北青山こまり/★★★★☆)
1001 Grams / Ane Dahl Torp * BulBul Film / Pandora Filmproduktions / Slot Machine * Photographer: John Christian Rosenlund ©
91分 ノルウェー語、ドイツ語、フランス語、英語 Color | 2014年 ノルウェー=ドイツ=フランス | 配給:有限会社ロングライド
【第27回東京国際映画祭】
開催期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)の9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座など
公式サイト: http://www.tiff-jp.net