【LBFF】『スガラムルディの魔女』:イグレシア監督Talk!

「この映画の中に出てくるお話はみんな事実です」

囲み写真

カロリーナ・バング、吉木りさ、イグレシア監督

10月12日、『スガラムルディの魔女』上映前に、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、妻で作品に出演しているカロリーナ・バング、そしてグラビアアイドルの吉木りさが登場した。三人とも魔女のイメージで黒い衣裳を着用、そのうえ吉木りさから二人に魔女の三角帽子がプレゼントされたため、舞台にひと足早いハロウィンが来たかのようだった。吉木りさはこの作品について「すごい衝撃的でしたね。クッションを握りしめて観ていました。展開が読めなくて、魔女たちの狂気のさたが目に焼き付いています。女性の執念のすさまじさに、男性の方が観たら一週間眠れないかもしれませんね」と語り、自分の衣裳を監督から「すごく素敵ですよ。映画にも出られるような美しさです。ぜひ次回には」と褒められると、「すぐにスペインに駆けつけます」とはしゃいでいた。

トロフィー受賞 『スガラムルディの魔女』は、イグレシア監督にとって「私と妻のカロリーナにとって幸せになったきっかけの作品です」とのこと。映画を作るきっかけについては「魔女というのは私の人生の中で重要な位置を占めています。魔女と言えばいいイメージは浮かばないですよね。でもちょっと魅了されるようなところが常に私の人生の中にはありました」と語った。魔女に限らず、イグレシア監督作品では、女性を愛するがゆえに暴力が生まれたり、逆に女性自体が恐怖の対象になったりすることがよくあるのだが、それについて「女性は愛する対象でもありますし、それと同時に恐怖も与える存在だと思います。もし恐れるということが無くなってしまったならば、尊重するということも無くなってしまうので、女性の意味が無くなってしまうと思います。みなさんもよくご存知のことだと思いますが」と女性観を披露。さらには「この作品を見ると女性と言うのはとても魔女的な要素を持っていて、男性がいかにまぬけなのかということがわかるかと思います」とも。もしかして監督って女性恐怖症?舞台上では、最後に映画祭プロデューサー、アルベルト・カレロ・ルゴ氏よりベスト作品賞のトロフィーが監督に贈られた。



『スガラムルディの魔女』メイン 魔女伝説というと、おどろおどろしいものを想像してしまう。本作は、まるで「マクベス」のように、3人の魔女たちがお鍋をぐつぐつ煮込んでいるシーンから始まるのを筆頭として、中世の魔女のイメージをできる限り再現し、さらにはイグレシア監督流にそれを膨らますことに力を注いでいるので、その期待を裏切らない。また、それと同時にタイトル・ロールで数々の魔女を描いた絵画を登場させるだけでなく、現実に生きた女性たちの写真が現れることにも注目したい。エリザベス1世、セダ・バラ、マタ・ハリ、マレーネ・ディートリッヒ、グレタ・ガルボ、ベティ・デイビス、フリーダ・カーロ、マーガレット・サッチャーなどなど。近代の魔女たちというわけである。現代に生き続ける魔女運動自体が、反キリスト教であり、女性の神を崇めることから、フェニミズム、女性解放と遠くないところにあるのである。ゆえに、そこまで視野に入れたこの作品は、単なる女性恐怖症ということではなくて、どちらかというと、女性賛美の感覚があるのである。「男性がいかにまぬけなのか」という監督の言葉の裏には、そうした意味があるのではなかろうか。



イグレシアストーク 映画上映後のティーチ・インでは、この映画の背景が、イグレシア監督によってたっぷり語られた。「この映画の中に出てくるお話はみんな事実です」と。監督さん冗談が好きなようである。

 「スガラムルディという村は実在します。北の方にある村で、実際に映画もそこで撮影しています。17世紀に宗教裁判で魔女狩りをしたということで知られています。面白いことに、その地方の人はみんな自分のことを魔女だって言っています。“拷問とかする必要もなく”私たちは魔女だと。実際4000の魔女の中からまずは36名の方が本物だということで、取り押さえられ最終的には9名、この人たちは本当に魔女であるということで捕まえられたのですが、最終的に殺されたのは4名と言われています。4000のうちの4名ですので“たいしたことはない”と思います。」

魔女というと、後ろ暗いイメージがあるにも関らず、むしろここの女性たちは、それを誇りにしているようである。その辺りにこの地方の女性の逞しさを見るような思いがする。

『スガラムルディの魔女』サブ1 「そこには実際に集会のようなものが行われていた洞窟があります。私たちはそこで実際に撮影をしております。洞窟の近くで家を探したのですが、その家の方は実際に宗教裁判にかけられた家族の方でした。食事に招待されて、ひいおばあさんは魔女だったのですかとお聞きしたのですが、ああもちろんですよという答えでしたね。私は宗教裁判の歴史の本をよく読みこんでおりましたので、その話を聞くのはとても興味深いものでした。その本によると魔法の粉を煙突の中にしまっていたことが書かれていましたので、お皿を片づけている間に煙突にも入りこみました。でもそこには何もありませんでした。ススがたくさんで結局黒くなって出てきただけでした」

ここで時間切れとなり、ティーチ・インは終了したのだが、イグレイア監督は、まだ喋り足りないといった様子で、会場を後にした。彼の作品の特徴は、常にストーリー、描写が過剰で、それが不思議な魅力になっているのだが、おしゃべりにもそれが出ていて、真にサービス精神が旺盛な人であることが感じられた。また、彼の作品世界の奥にはオタク的とも言えるリサーチがある。それが証明された思いのする今回のティーチ・インだった。



▼『スガラムルディの魔女』作品情報▼
原題; Las brujas de Zugarramurdi
監督・脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:ヒューゴ・シルヴァ、マリオ・カサス、
カロリーナ・バング、カルメン・マウラ 他
2013年 / スペイン / 114分 / R-15 /
配給:松竹メディア事業部
■公開情報
11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
(c) 2013 ENRIQUE CEREZO P.C., S.A.- LA FERME PRODUCTIONS-ARTE FRANC ECINEMA


▼第11回ラテンビート映画祭開催概要▼
【東京】10月9日(木)~13日(月・祝)
会場:新宿バルト9(新宿三丁目イーストビル9階)
【大阪】10月24日(金)~26日(日)
会場:梅田ブルク7
【横浜】11月7日(金)~9日(日)
会場:横浜ブルク
公式サイト:http://www.lbff.jp/
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