イヴ・サンローラン

映画と。ライターによるクロスレビューです。

YSL_main1監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット、ニコライ・キンスキー

【作品解説】
半世紀にわたって、全世界の女性から愛され続け、今もなお絶大な人気を誇るハイブランドの創始者にして、伝説のファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。“モンドリアン・ルック”“スモーキング”“サファリ・スーツ”など過去の常識を打ち破る革命的なコレクションでファッションの歴史を塗り替え、「モードの帝王」と讃えられた。 エレガンスとは縁の無い中産階級の家庭に生まれたサンローランが、いかにして眩いまでに光り輝くキャリアを築きあげたのか?生涯のパートナーとめぐり逢っても、なお埋められなかった孤独とは?華麗なクリエーションに秘められた壮絶なまでの創造の苦しみとは?天才の知られざる人生の“喝采と孤独”を描く、感動の物語が完成した。(公式サイトより)


【クロスレビュー】

黒いドレスのウエストに、白い布を手で破いてリボンのように巻きつける。それだけで、オートクチュールの伝統に新しい息吹を持ちこんだ、イヴ・サンローランの革新性を見せる。60年代映画界ではヌーベルバーグ、ファッション界では、プレタポルテ、新たな文化の花が開いたが、その空気感が見事。彼を支えた恋人であり、仕事のパートナーでもあるピエール・ベルジェ。有能ではあるが、平凡な彼との関係はモーツァルトとサリエリのごとしで、その彼の視点で天才を描いた結果、その孤独や苦悩、心の奥までは所詮計り知れないものとなり、それがイヴ・サンローランに神秘性をもたらした。当時の本物の衣裳を使ったプレタポルテの再現は、圧巻の一言。
(藤澤貞彦/★★★★☆)

イヴとピエール・ベルジェの公私にわたるパートナー関係は決して順調ではなく、むしろ苦しい時間のほうが長い。イヴの心が自分から離れ、他の男に夢中になったとしても彼の尻拭いに徹したピエールの愛に切ない。「彼(注:イヴの新しい愛人)を愛している。でも生涯の男は君だけだ」なんて愛する人から言われたら・・・と思うと複雑だが、このセリフが二人の離れがたい関係性を象徴していると言えよう。イヴの孤独よりピエールの苦悩のほうが凡人の私としては共感しやすく、次第にイヴの物語というよりピエールのそれとして捉えていた。ピエール役ガリエンヌは主演・監督作『不機嫌なママにメルシィ!』(9月27日公開)とはガラッと雰囲気を変え(髪型も)、シリアスな役どころを好演。
(富田優子/★★★☆☆)

浮気をしたイヴが、パートナーであるピエールに向かって言う台詞。「彼のことを愛してるけど、生涯の男は君だけだ」が頭から離れない。何と言う強気、何という自信。それを言って許されるほどの傲慢さがまた彼を美しく、孤高の存在にさせる。才能があると言うことはある意味残酷なことで、本人にも周囲にも犠牲を強いる。それでもイヴとピエールは互いに巡り合えて幸せだったと信じたい。印象的だったのはやはり俳優陣。イヴが飼っていた犬がなついたほどと言うピエール・ニネの風貌にも注目だ。
(外山香織/★★★☆☆)


▼作品情報▼
YSL_sub1原題:Yves Saint Laurent
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://ysl-movie.jp/
2014/フランス/106分
(c)WY productions-SND-Cinefrance 1888-Herodiade-Umedia
2014年9月6日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他 全国ロードショー

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