監督専念は「合う役がなかった」、「西遊記」映画化のチャウ・シンチーが6年ぶり来日!

周星驰『少林サッカー』などで知られる香港の周星馳(チャウ・シンチー)監督が、『ミラクル7号』(08)以来6年ぶりの来日を果たし、7月22日(火)午後、東京都内で記者会見に出席した。

 最新作『西遊記~はじまりのはじまり~』の11月日本公開を控えての来日となったチャウ・シンチー。同作は中国で興行収入12億4,606万元(約210億円)を叩き出し、昨年のハリウッド映画もあわせた興収ランキングで第1位を記録した大ヒット作だ。

 今回の会見は、日活と東宝東和がタッグを組み、アジアの第一級作品を日本に紹介する新レーベル“GOLDEN ASIA”の記者会見にあわせて行われたもの。新レーベルが提供する記念すべき第1弾作品として、『西遊記~』が選ばれた。

『西遊記~はじまりのはじまり~』は、邦題のサブタイトルからも察せられるように、日本でもよく知られる「西遊記」の物語が始まるまでの前日譚。まだ三蔵法師を名乗る前の玄奘を妖怪ハンターとして主役に据え、個性的な妖怪たちとの戦いや女妖怪ハンターとの恋などを、チャウ・シンチーならではのハチャメチャ&ギャク満載の演出で描く。とりわけ、孫悟空は子供たちの夢を打ち砕きかねないかなり衝撃的なビジュアルで登場。女、子供いじりにかけては容赦ないチャウ・シンチーらしいと言えば、らしいのかもしれない。

周星驰2 これまで自身の監督作では主演も兼ねてきた“星爺”だが、本作では製作・脚本・監督と裏方に徹している。会見でその理由を問われると、「自分に合う役がなかったから。良さそうな役もありましたが、僕は主役しかやりませんから」と星爺らしいナルシスト発言をサービス。今回、自分ではない主演俳優として選んだのは、中国の人気俳優・文章(ウェン・ジァン)だ。

 ウェン・ジァンは、中国で2011年に大ヒットした『失恋33天』(原題)でブレイク。日本ではまだ馴染みの薄い俳優だが、『海洋天堂』(10)でジェット・リー演じる主人公の自閉症の息子を好演した彼だと言えばピンとくる人もいるかもしれない。そんなウェン・ジャンの起用理由について、「僕は直感でキャスティングすることが多いのですが、彼は見た目がピッタリだった。それに、仏教をよく勉強していたから。潜在能力のある俳優でしたが、当時はまだギャラがそんなに高くなかった。けど、今や彼は大スター。もうキャスティングするのは大変です」と明かしていた。

「西遊記」モノの作品といえば「ドラゴンボール」を忘れてはならないが、チャウ・シンチーにとっては、2009年の実写版『DRAGONBALL EVOLUTION』にプロデューサーとして名を連ねるも、一切意見が反映されず不満の残る結果になったという苦い思い出もある作品。質疑応答で、『西遊記~はじまりのはじまり~』への「ドラゴンボール」の影響を聞かれ、「大きな影響を受けています。特に孫悟空の変貌していく外見など、『ドラゴンボール』から閃きました」と応えていた。

(左から)日活・佐藤社長、チャウ監督、東宝東和・松岡社長

(左から)日活・佐藤社長、チャウ監督、東宝東和・松岡社長

 今回、新レーベル “GOLDEN ASIA”の第1弾として自身の作品が決まった感想を聞かれると、「お目が高い。これを選ばずして他に何を選ぶ?」とご満悦の様子だった星爺。壇上でがっちり手を取り合った日活の佐藤直樹・代表取締役社長と東宝東和の松岡宏泰・代表取締役社長はこの日、 “GOLDEN ASIA”について、「“アジア映画最強のレーベル”という目標を掲げた取り組み」であると意気込みを語った。

 2012年に100周年を迎え、次の100年に向けた取り組みとして日活がキーワードに掲げたのが「国際共同制作」。実際、同社は一昨年のカンヌで、ジョン・ウー監督の製作会社と鈴木清順監督の『野獣の青春』(63)リメイクを共同制作すると発表したこともある。「ビジネスも文化も一方通行はダメ」と語った佐藤社長。「(日活は映画を)作って売る会社。同社が外に打って出るためにも、アジアの優れたクリエーターとのネットワークを強化するのはとても重要なこと」と述べ、アジア映画と日本を繋ぐ新たな取り組みへの期待感をにじませた。

 なお、 GOLDEN ASIAは第2弾としてインド映画史上最高の製作費と全世界興収を記録したアーミル・カーン(『きっと、うまくいく』など)主演のアクション『チェイス!』(12月公開)を、第3弾としてインドの実在の五輪メダリストの数奇な半生を描いた『BHAAG MILKHA BHAAG』(原題、来年公開)を準備している。

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