【フランス映画祭】フィニッシャーズ(仮)
トライアスロン、別名アイアンマンレース。午前6時、参加者たちが一斉に海に向かって泳ぎだしていく。上空からの俯瞰撮影。2700人分の波しぶきが絶え間なく模様を描きだす。海が泡立っているかのような不思議な光景。しかし、その中には人生がある。水泳3.8km、バイク180km、ラン42.195kmこのような過酷なレースに挑戦する男たちだ。おそらく平凡な私たち以上に色とりどりの、2700とおりのドラマがそこにあるはずだ。映画はその中のひとつの人生を取り上げる。生まれながらの障がい者、車いすで生活している息子と父のふたり一緒のトライアスロンへの挑戦の物語だ。
なぜ彼らがトライアスロンに挑むことになったか。それがこの作品の肝である。父(ジャック・ガンブラン)は、妻に息子をまかせっきりで、いつも家を空けている。ロープウェイの鉄塔の整備。それが彼の仕事だ。高い鉄塔に宙ぶらりんになって作業をする。彼は、危険と隣り合わせでいることで、辛うじて生きていると実感しているのだろうか。けれどもそこは孤独であり、宙に浮いていることは、人生や生活から逃げている彼を象徴している。一方、息子のジュリアンは、いつも窓から望遠鏡で外を眺めている。ランニングをする人、自由に空を飛ぶ鳥、家の近くに住む解放的な若い女性の起床姿。母とふたりの密接な関係と不在がちな父を待つ暮らし。そんな彼にも、外へ行ってみたい、自立したい気持ちが溢れてきていることが、彼の見ているものから想像できる。
そんな時、父親は突然失業し、家でブラブラすることになる。長年家を空けることが多かった彼は、息子を愛してはいるが、正面から向き合うことができない。息子とのギクシャクした関係を何とかしてほしいと願う妻の言葉に、早く仕事先を見つければいいんだろうと、まるで口論にもならない返事で答える父。そんな中、突然降って湧いたアイアンマンレースに一緒に出場するという息子ジュリアンの計画は、自分が何かに挑戦したいという気持ち以上に、父との関係を修復したい、父を立ち直らせたいという気持ちによるものなのである。ゆえにこれは主役のジュリアンの物語というより、彼によって家族が再生していく物語なのであり、そういう意味では、むしろどこにでもある父と息子と母の物語とも言える作品になっているのだ。障がい者の息子が父とトライアスロンに出場するというドラマティックさがありながらも、遠い世界の話ではないところが、この作品の価値である。
▼『フィニッシャーズ(仮)』作品情報▼
原題:De toutes nos forces
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、アレクサンドラ・ラミー、ファビアン・エロー
制作:2014/フランス/90分/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
© 2014 NORD-OUEST FILMS – PATHÉ PRODUCTION – RHÔNE-ALPES CINÉMA
※2014年8月29日(金)より、TOHOシネマズ 日本橋、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー。公開時タイトル『グレート デイズ! ―夢に挑んだ父と子―』
【フランス映画祭2014】
日程:6月27日(金)〜 30日(月)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:トニー・ガトリフ監督
*フランス映画祭2014は、プログラムの一部が、福岡、京都、大阪で6月27日(金)から7月11日(金)まで、巡回上映します。
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2014/
Twitter:@UnifranceTokyo
Facebook::http://www.facebook.com/unifrance.tokyo/
主催:ユニフランスフィルムズ
共催:朝日新聞社
後援:フランス文化・コミュニケーション省-CNC/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:ラコステ/バリラックス/ルノー/ELLE JAPON/LVT
運営:ユニフランス・フィルムズ/東京フィルメックス