【フランス映画祭】友よ、さらばと言おう

クロスレビュー

tomoyo_main監督・脚本:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン、ジル・ルルーシュ、ナディーン・ラバキー、マックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ
音楽:クリフ・マルティネス
製作:シリル・コルボ―=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン、シドニー・デュマ

【作品解説】

激走!マルセイユからパリへ。かつて親友だった2人の刑事。
たがいの愛する者のために、今再び立ち上がる。

『すべて彼女のために』と『この愛のために撃て』で、フランスが誇るいぶし銀のフィルムノワールに現代的なアクションを持ち込んでみせたフレッド・カヴァイエ監督。『すべて彼女のために』はポール・ハギス監督によってハリウッドリメイクされ、自身のハリウッド進出も決定している期待の俊英が、3部作の締めくくりとして完成させたのが『友よ、さらばと言おう』だ。
主人公のシモンとフランクを演じたのは『すべて彼女のために』のヴァンサン・ランドンと『この愛のために撃て』のジル・ルルーシュ。カヴァイエ監督の過去2作に主演した2人がタッグを組んで、男の意地と誇りを体現する。音楽担当は、スティーブン・ソダーバーグやニコラス・ウィンディング・レフンとのコラボで知られる名手クリフ・マルティネス。フランス映画の枠を飛び出した才能が結集して、あふれるエンタメ魂を見せつける渾身のサスペンス・アクションだ。

(物語)分かちがたい絆で結ばれた敏腕刑事、シモンとフランク。南フランスのトゥーロン警察で長年コンビを組んできたが、不幸な事故がすべてを一変させる。シモンが飲酒運転で人身事故を起こし、刑務所に送られたのだ。6年後、刑期を終えたシモンは警備会社に勤めるも、妻とは離婚、うらぶれた暮らしに身を埋めるばかり。フランクはかつての相棒を気づかうが、閉ざされた心を開くことができずにいた。そんなある日、シモンの最愛の息子が、偶然にもマフィアの殺し現場を目撃してしまう。それは、昨今警察を悩まし、フランクも担当している壮大なマフィア抗争の一味によるものだった。目撃者を消すため、息子が狙われている事を知ったシモンは、フランクの協力を仰ぎ、自らの手で裁きを下すことを決意する。


【クロスレビュー】

鈴木こより:★★★★☆

刑事もののバディムービーは数多くあれど、今作はワケありの絆で結ばれた2人組。なぜ、そこまでかつての相棒に肩入れするのかという疑問をチラつかせながら、闘牛場や高速鉄道などを舞台に緊張感溢れる場面がどんどん展開されていく。硬派で渋~いサスペンスではあるけど、個人的にフランスで最もセクシーな俳優だと思っているジル・ルルーシュによるコミカル・お色気シーンもちゃんとあったりして、緩急の効いた演出を堪能。フランス映画祭で来日して欲しかった!

藤澤貞彦:★★★★☆

帰宅途中に起こした交通事故で、仕事も失い家族も失った元刑事。殺人事件の目撃者となった彼の息子を執拗に追うギャング、それを追う父。カーチェイスも、銃撃戦も、殴り合いあいも単なるアクションではなく、すべて、ギクシャクしていた息子との関係を取り戻すための道程となっている。どこまでも主人公を助けてくれる元同僚刑事との友情、ヒネリが効いた結末もいい。それにしても父親の役割、母親の役割が奇しくも本映画祭で上映された『フィニッシャーズ(仮)』と似ている。家族の形に鷹揚なイメージがあったフランスが、なぜ今家族の再生にこだわっているのか、興味深い。

富田優子:★★★★☆

原題には「贖罪」「償い」の意味があると言う。ラストを見ると合点がゆくし、ただの相棒物語&友情物語ではなく、人間の弱さや愚かさを織り込んだ巧みなストーリー展開に唸らされる。敵との対決も弾丸切れたら頭突きに噛み付きなど(サッカーW杯かい!)、本来アクションの基本である肉弾戦に重きを置いているような描写も好感だ。それにしても、カヴァイエの過去2作も家族を守るためなら罪を犯すことも厭わない男が描かれていたが、人間たるもの、最も守りたいもの、守るべきものはやはり家族なのだろうか。家族の価値観が多様化する今日だが、ハードな作風のなかにも家族の絆を求めて戦う平凡な男を通してカヴァイエなりの家族のあるべき姿を提示しているようでならない。家族の存在が人を弱らせ、また強くするのだ。


2012年/フランス/90分
sub1原題:Mea Culpa
配給:ブロードメディア・スタジオ
公式サイト:http://www.tomoyo-saraba.com/
© 2012 LGM CINEMA GAUMONT TF1 FILMS PRODUCTION K.R. PRODUCTIONS BAD COMPANY NEXUS FACTORY
8月1日(金)、新宿武蔵野館他全国順次公開!



【フランス映画祭2014】
日程:6月27日(金)〜 30日(月)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:トニー・ガトリフ監督
*フランス映画祭2014は、プログラムの一部が、福岡、京都、大阪で6月27日(金)から7月11日(金)まで、巡回上映します。
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2014/
Twitter:@UnifranceTokyo
Facebook::http://www.facebook.com/unifrance.tokyo/
主催:ユニフランスフィルムズ
共催:朝日新聞社
後援:フランス文化・コミュニケーション省-CNC/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:ラコステ/バリラックス/ルノー/ELLE JAPON/LVT
運営:ユニフランス・フィルムズ/東京フィルメックス

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)