ディス/コネクト

繋がることに餓えた人間たち

BRAY_20111007_DIS_3380.CR2家庭、学校、会社…嫌いな人とも関わらなければならないリアルな世界と比べれば、繋がりたい人とだけ繋がるSNSの世界は格段に心地よい。オープンなようでいて、結局は、自分と同じ考えを持つ人としか繋がらなくなる。フォローする人々のツイートが並ぶタイムライン、Facebookの投稿に寄せられる「いいね!」の数々。我々は、無意識に自分の都合の良い世界を作り上げておきながら、それが世論であり世界であると錯覚すらしてしまう。しかもそこでは、相手に会ったこともないのに、ありのままの自分をさらけ出すこともできる。そして、「分かるよ」と言ってくれた相手とだけ付き合えればよいのだ。

しかし一方で「装う」ことも簡単にできるのがSNSだ。他者に成りすますことも嘘をつくことも。その陰にどんな悪意が潜んでいるのかも一見しては分からない。リアルな人間関係でも他者の真意なんてわからないのだからなおさらだろう。本作では、チャットが原因で個人情報を抜き取られ被害に遭った夫婦、同級生のいたずらでSNSに送った自分の恥ずかしい写真をばらまかれ自殺を企てた少年、ポルノサイトで知り合った女性レポーターと青年という、3つのエピソードを一般人が陥っていく落とし穴として描きながら、それらがまさに繋がっているかのようなストーリー展開をみせる。被害者と加害者という短絡的な対立構造ではなく、どちら側にも共感と嫌悪感を抱かせるような人物描写。特に、自殺未遂をした少年(被害者)の父親が同級生の少年(加害者)とチャットを通して少しずつ理解しあっていくのが興味深い。

本作は決してSNSを悪だと決めつけているのではない。それらはあくまできっかけや手段であって、どう用いるかはやはり自分次第なわけだが、ジリジリと肌で感じとれるのは、人はそれほどまでに繋がりに餓え、求めているということだ。表層的ではない、真の意味での繋がりを。結果としてそれはSNSでの限界でもあり、その外に出て、リアルな相手と対峙しなければ達しえない。

本作のラストは、まさにそれぞれの対峙が描かれている。人との繋がりはどうやったら実感できるのか。今ある繋がりに目をそむけてはいないか。繋がることに躍起になる前に、一度立ち止まってみる必要があるのではないだろうか?

▼作品情報▼
監督:ヘンリー=アレックス・ルビン
出演:ジェイソン・ベイトマン、 ホープ・デイヴィス、フランク・グリロ、ミカエル・ニクヴィスト、ポーラ・パットン、アンドレア・ライズブロー
2012年/アメリカ/115分
http://dis-connect.jp/
(c) DISCONNECT, LLC 2013
5月24日(土)より 新宿バルト9他にて公開
配給:クロックワークス
年齢区分:PG-12指定

トラックバック-1件

  1. 映画感想 * FRAGILE

    ディス/コネクト/画面のむこうに、人生がある

    ディス/コネクトDisconnect/監督:ヘンリー・アレックス・ルビン/2012年/アメリカ けっきょく、繋がっている相手は、人間なんだということを。 試写で鑑賞。公開は5月24日です。 あらすじ:ネットで釣ったら大変なことになりました。 いたずらっこがネットで釣りしてたらリアルでやばいことにお父さん(ジェイソン・ベイトマン)が激怒エロチャットで働く若者に取材しようとした熟女が…カード情報抜き取られてすっからかん(アレクサンダー・スカルスガルド) ざっくりこんなかんじになっております。 ※ネタバレ…

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)