第9回大阪アジアン映画祭が開催中!野球映画『KANO』ほか、充実の台湾映画上映をレポート

オープニング作品『KANO』       ©ARS Film Production

オープニング作品『KANO』 ©ARS Film Production

 第9回大阪アジアン映画祭が3月7日(金)~3月16日(日)の日程で開催されている。アジア各国の最新映画、アジアの若手映画作家の紹介など、毎年多彩な内容を誇る同映画祭だが、今年は「台湾:電影ルネッサンス2014」と題した特集を企画。オープニング作品『KANO』(2015年日本公開予定)を筆頭に、とりわけ台湾映画が充実している。
(左3人目から:曹佑寧さん、魏徳聖プロデューサー、脚本の日本語部分リライトを担当した映画監督・林海象さん、永瀬正敏さん、坂井真紀さん、台北駐日経済文化代表処・沈斯淳代表、馬志翔監督)

(左3人目から:曹佑寧さん、魏徳聖プロデューサー、脚本の日本語部分リライトを担当した映画監督・林海象さん、永瀬正敏さん、坂井真紀さん、台北駐日経済文化代表処・沈斯淳代表、馬志翔監督)

 7日のオープニング上映前の舞台挨拶には、『KANO』主演の永瀬正敏さん、共演の坂井真紀さん、馬志翔(マー・ジーシアン)監督、『海角七号』『セデック・バレ』の監督として知られるエグゼクティブ・プロデューサーの魏徳聖(ウェイ・ダーション)さんらが登壇した。『KANO』は、日本統治下の台湾で、日本人、台湾人、先住民による混成チームの嘉義農林高校(通称「嘉農」=カノウ)野球部が、松山商業出身の近藤兵太郎監督のスパルタ式指導により、1931年に台湾代表として甲子園に出場を果たしたという実話をもとにした作品。2月27日から台湾で公開され、3時間の長尺ながら1億5,000万台湾ドル(約5億円)を超える大ヒットを続けている。近藤監督を演じた永瀬さんは、「僕の生徒たちと、監督、プロデューサーが台湾からいらっしゃって下さいました。僕の“誇り”がここに立っています」とスタッフ・キャストを紹介。球児を演じた台湾と日本の少年たちは、劇中のユニフォーム姿からがらりと印象を変えてフォーマルな装いに身を包んで登壇し、観客の歓声を浴びていた。また、近藤監督の3人のお孫さんも来場、場内は大きな拍手に包まれた。
©ARS Film Production

©ARS Film Production

 球児役の少年たちは、実際に野球ができるという条件を重視して選ばれた。クランク・イン前から合宿を行い、野球と演技の特訓を受けたというキャストたちは、映画同様に友情を育んだという。チームの主将・呉明捷選手を演じた曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)さんは、大学野球で活躍する現役の野球選手でありながら、その端正な顔立ちと鍛え上げられた肉体がスクリーンにも映え、台湾で人気が急上昇している。
 上映終了後、観客からのスタンディングオべエーションで再び会場に迎え入れられた“チーム『KANO』”の面々は、曹さんの「気をつけ!」の掛け声の後に一同深々と一礼。大きな拍手に包まれて、馬監督も感極まった様子だった。
甘い殺意Sweet Alibis 台湾特集はジャンルも多岐にわたる。2011年に『運命の死化粧師』(同年の東京国際映画祭で上映)で長編デビューした連奕琦(リエン・イーチー)監督は、新作『甘い殺意』を携えての来日。台湾映画としては珍しい推理サスペンスだ。ところどころ遊んだ劇画的な映像を盛り込み、凸凹刑事コンビを演じる人気俳優の蘇有朋(アレック・スー)と林依晨(アリエル・リン)のコミカルな掛け合いも楽しい。ティーチインに登場した連監督は、「サスペンス映画は海外、特に日本で人気だが、台湾では未発達。私たちは台湾でサスペンス映画の市場を確立したい」との意欲を示した。
 さらに今年の大阪アジアン映画祭では、1960年代の台湾で一世を風靡した台湾語映画をフューチャーした小特集も組まれた。「台湾語映画、そして日本」と銘打ったこの特集では、台湾語映画にオマージュを捧げた新作『おばあちゃんの夢中恋人』、そして日本統治時代の台湾で撮られた貴重な記録短編映画が上映されている。
FOREVER LOVE (c) 2013 All Rights Reserved

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 『おばあちゃんの夢中恋人』は、台湾で活躍する北村豊晴監督の長編2作目だ。台北近郊に位置し、温泉地としても人気の高い北投(ベイトウ)。ここはかつて“台湾のハリウッド”と呼ばれ、台湾語映画が数多く作られていた。孫娘が脚本家だった祖父と女優だった祖母の馴れ初めを聞くスタイルで展開する本作は、映画愛たっぷりに描かれるウェルメイドなラブコメ。ドラマ「P.S.男」、長澤まさみ共演で話題の「ショコラ」などで知られる要潤似の二枚目俳優・藍正龍(ラン・ジェンロン)が“三の線”で魅力を全開させている。この台湾語映画への憧憬に溢れた作品を監督したのが日本人の北村監督だということも興味深い。
©Taiwan Aerial Imaging, Inc.

©Taiwan Aerial Imaging, Inc.

 注目作としてもう1本、ドキュメンタリー映画ながら台湾で異例の大ヒットを記録した『上から見る台湾』を挙げたい。台湾の豊かな自然、そして環境汚染による被害を全編空撮で映した驚くべき映像が見応え満点。後日「映画と。」では、本作の齊柏林(チー・ボーリン)監督へのインタビューをお届けする。また、原田マハのベストセラー小説を台湾のスタッフ・キャストで映画化した日台合作『一分間だけ』は、13日(木)夜の上映会場に人気俳優の張鈞甯(チャン・チュンニン)、何潤東(ピーター・ホー)が登場する予定。今年の本映画祭で最も華やかな一夜となりそうだ。
 第9回大阪アジアン映画祭は3月16日(日)まで開催。もちろん、台湾映画以外にもアジア各国から選りすぐりの新作が紹介されている。筆者が映画祭前半を取材して感じたところでは、フィリピン映画に要注目だ。特別招待作品部門『ブルー・ブースタマーンティー』はなんと、フィリピンから日本に出稼ぎにやって来て、コスチュームをつけて戦隊ヒーローもののドラマに出演する男性が主人公。ユル~い笑いが全編通して続くおススメの1本だ。

上映スケジュール、チケット情報などは公式ホームページを参照 http://www.oaff.jp/2014/ja/index.html
 

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