【TNLF_2014】『NOKAS』なぜノルウェーで史上最悪の現金強奪事件は起こったのか

NOKAS まさかノルウェーでこのような史上最悪の現金強奪事件が起こるとは・・・。
2004年、特殊部隊に変装した11人によって、銀行の現金集配所「NOKAS(ノカス)」が襲われ、たった20分の間に日本円にして約10億円が強奪された。その犯行は人通りのある朝の8時すぎに堂々と行われ、ヨーロッパ全土に衝撃を与える。本作は関係者の事情聴取と目撃情報をもとに製作された実録ドラマで、監督はオリジナル版『インソムニア』()のエーリク・ショルビャルグ。(※クリストファー・ノーラン監督、アル・パチーノ主演でリメイクされた)

 リアリズムに徹した撮影と、事件に対する客観的な目線が印象的だ。組織的な犯行といい、外国語を交えた会話といい、犯人らの素性に迫ればいくらでも膨らませて描くことができる題材だと思うのだが、本作は登場人物への感情を排し、事件そのものを忠実に再現している。爆破シーンや銃撃戦といったスリリングな展開に息を吞むも、ハリウッド映画に見られるようなド派手さはない。と言うと、少し物足りなく聞こえてしまうかもしれないが、監督はあえて余計な味付けをせずに、“事件の本質”をより正確に捉えようとしたのではないか。

 なぜこの事件は起こってしまったのか。犯行グループは綿密な計画と入念な準備、大胆な実行力を備えていたのだが、それに対して、警察の対応は“あまりにも対照的”と言わざるをえない。事前に情報を掴んでいたにもかかわらず、事態に対応できず翻弄されてしまっている。また市民も、銃撃戦を目の当たりにして慌てる様子もなく「これは訓練か?」などと犯人に訊ねてしまったり、のんびりと構えている人が多いことに驚かされる。
事件から6年後の2010年に本作は撮影されているが、監督はあらためてこの事件を問う必要性を感じていたのだろう。

 そして、この撮影の翌年、戦後最悪の惨事がふたたびノルウェーで起こってしまう。77人もの犠牲者を出し、日本でも大きく報道された「ウトヤ島銃乱射事件」である。地元警察は通報から現地到着までに約1時間も要したことで批判を浴びていたが、事故検証委員会による調査の結果、「事件の防止は可能であった」と報告された。2004年の事件の反省は活かされなかったのだろうか。
移民に対しても寛容な政策をとっている国であるが、銃乱射事件の犯人はその移民政策に強い不満を抱いており、犯行に及んだと言われている。ヨーロッパの中では比較的安定した国というイメージがあるノルウェーにおいて、このような出来事は想定し難いものだったかもしれない。しかし油断や隙というものは大抵の場合、思いがけない時に生まれるもの。本作はまさにそういうタイミングで撮影された、意義深い作品である。

※今後の上映日時:2月14日(金) 21:10~

製作:2010年/ノルウェー/78分
監督:エーリク・ショルビャルグ
出演:Marit Synnøve Berg/Frode Winther Gunnes/Morten Larsen
2011年ノルウェーアカデミー賞最優秀監督賞、脚本賞受賞。


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