(ライターブログ)中国の映画興行収入、2013年は27.5%増の3,670億円に=ランキングから見える国産映画の人気

 急激に拡大し続ける中国の映画市場。2013年、中国本土で劇場公開された映画は305本(うち外国映画は約60本)に上るそうだ。全国興行収入は計217億6,900万元(約3,670億円)に達し、前年比で27.51%も増加した。
 注目すべきは、国産映画が大きく伸びたこと。並み居るハリウッド大作を押しのけて、昨年は国産映画が興収ランキングの上位を席巻、全体の58.65%を占めた。国産映画の興収127億6,700万元という数字は前年比で54.32%伸びており、その勢いは明白だ。
 下記は、2013年の中国興行収入ランキング(太字は国産映画、タイトルは原題)。

『西遊・降魔篇』 12億4,606万元(約210億円)
2『アイアンマン3』 7億6,844万元(約130億円)
『致我们終将逝去的青春』 7億1,901万元(約121億円) ※『So Young』のタイトルで2013東京国際映画祭にて上映
4『パシフィック・リム』 6億9,583万元(約117億円)
『狄仁杰之神都龍王(判事ディーと龍王)』 6億220万元(約101億円)
『私人訂制』 5億8,929万元(約99億円) ※12月19日公開~ 今年1月6日時点で6億6,459万元に
『中国合伙人』 5億3,926万元(約91億円) ※『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』のタイトルで2013東京・中国映画週間にて上映
『北京遇上西雅図』 5億1,967万元(約88億円) ※『北京ロマン・イン・シアトル』のタイトルで2013東京・中国映画週間にて上映
『小時代』 4億8,810万元(約82億円)
10『ゼロ・グラビティ』 4億3,633万元(約72億円)
11『ワイルド・スピード EURO MISSION』 4億1,385万元(約70億円)
12『クルードさんちのはじめての冒険』 3億9,488万元(約67億円)
13『マン・オブ・スティール』 3億9,464万元(約67億円)
14『007 スカイフォール』 3億7,678万元(約64億円)
15『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 3億5,390万元(約60億円)
16『ジュラシック・パーク』3D 3億4,896万元(約59億円)
17『警察故事2013』 3億4,538万元(約58億円) ※12月24日公開~今年1月6日時点で4億5,581万元に
18『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』 3億4,350万元(約58億円)
19『G.I.ジョー バック2リベンジ』 3億3,000万元(約56億円)
20『ホビット 思いがけない冒険』 3 億1,000万元(約52億円)
(国家新聞出版広電総局、中国電影報より)

 『アイアンマン3』、そして日本を押しのけ思いがけず大ヒットした『パシフィック・リム』を除いて、上位のほとんどを国産映画が占めている。

 1位の『西遊・降魔篇』は、チャウ・シンチー監督(『少林サッカー』『カンフーハッスル』)が中国の人気俳優・文章(ウェン・ジァン)、日本にもファンが多いスー・チー、羅志祥(ショウ・ルオ)らを迎え、少年時代の三蔵法師と孫悟空の出会いと冒険を描いたコメディ。それにしても中国の人は、本当にチャウ・シンチー作品のようなハチャメチャの大活劇が好きである。

 西遊記モノといえば、今年の春節(旧正月)映画として1月31日に封切られ、初日だけで興収1億元(約17億円)という驚異的なヒットで快進撃中の『西遊記之大閙天空』もそう。ドニー・イェン主演、チョウ・ユンファ、アーロン・クォックらオールスター共演の大作で、やはり大スターのネームバリューと中国人に馴染みの深い物語の組み合わせは強いことを証明した。

 3位は東京国際映画祭でも『So Young』の邦題で上映された女優ヴィッキー・チャオの監督デビュー作。なんだかちょっと野暮ったい印象の青春映画だったが、やはりヴィッキー・チャオの人気と、このところ洋の東西を問わず増えている“青春時代を振り返って胸キュン”の風潮が中国にも波及しているらしい。

 近年、中国で作品を撮っている香港のピーター・チャン監督による第7位の『中国合伙人』もまた、現在の中国の経済成長を担ってきた人々の青春を描いて観客の共感を得た。これは非常によく出来た作品。このところ『ウォーロード/男たちの誓い』『捜査官X』などアクション映画を多く手がけ、正直あまりパッとしなかったチャン監督が、『ラヴソング』の頃に戻ったかのような手腕を見せている。日本で一般公開されなかったのが惜しい。

 そして、中国のヒットメーカーといえばこの人、フォン・シャオガン監督の『私人訂制』が12月19日公開にして約99億円を上げる大ヒットで第6位にランク・イン。フォン監督作常連のグォ・ヨウ主演のコメディで、相変わらずの人気を見せつけた。その上を行くスタートダッシュをきったのが、ジャッキー・チェン主演の人気シリーズ『ポリスストーリー』の最新作『警察故事2013』。12月24日に公開され、わずか1週間で17位にランクインする約58億円の興収を上げている。

 西遊記に、ノスタルジアをかき立てる青春映画、鉄板人気のハチャメチャ・コメディと、いかにも中国の一般市民が好みそうな題材がずらり。さらに、若者層には80年代生まれの人気ネット小説家・郭敬明が自身の青春小説を監督した『小時代』が受けるなど、今の中国人の感性にすっと馴染む作品の強さが顕著に表れた。

 ただし、中国ではヒットが期待できる国産映画の公開時期にハリウッド大作がぶつかりそうな場合、行政が意図的にその公開時期を後らせることが多々あるため、純粋に国産映画の人気がぶっちぎりなのかと言うと疑問が残るのだが、好調であることは間違いない。

 中国のスクリーン数は、昨年だけで5,077スクリーン増えた。昨年末時点での中国本土のスクリーン総数は1万8,195に上るだそうだ。嫌中感情の高まりも関係しているのだろう、日本では現在、ここで紹介したような中国の大ヒット作はなかなか一般公開されず、話題に上ることも少ない。しかし、ふと気がつけば、すぐ隣にとんでもない映画大国が出来上がっているというのが現状だ。

 来年は、行定勲監督による三浦春馬主演の日中合作映画『真夜中の五分前』のほか、長澤まさみが金城武の恋人役を演じているジョン・ウー監督作『太平輪』(原題)など、日本人も関心を寄せそうな作品の公開が控えているので、それらの動向を注視したい。互いに閉ざされた国民感情の“雪解け”は、往々にしてこうしたエンターテインメントの分野から起こるものだから。

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